愛と美の神
愛・性愛・美・多産を司る神格のファセット。豊穣神と重なるが、こちらは人と人の間に働く力に軸がある。
ギリシアのアプロディーテーは、優美な女神という近代の像とは裏腹に、抗いがたく人を狂わせる力として語られた。『イーリアス』では戦場に出て手を傷つけられ、退場させられる。メソポタミアのイシュタル(シュメールのイナンナ)は愛と戦を同じ身に負い、冥界へ降って還る。アプロディーテーの近東起源が古代から意識されていたことは、ヘーロドトスの記述に見える。ローマのウェヌスは本来庭園と豊穣の女神で、愛の女神としての性格はギリシアからの習合による。北欧のフレイヤは愛と多産を司りつつ、戦死者の半ばを取る側でもある。ヒンドゥーのカーマは花の矢で欲望を射込む若い神で、シヴァの第三の眼に焼かれて姿を失った——愛が苦行に敗れる筋がここにある。エジプトのハトホルは愛・音楽・酩酊を束ね、雌牛の姿をとる。アイルランドのオェングスの物語は、夢に見た乙女に恋い焦がれて彼自身が病み臥せるところから始まる。愛が抗いがたい力である点はアプロディーテーと変わらないが、その力を最初に受けるのが神の側だという構図はここに固有である。
図像の共通項は、随伴する小さな有翼の存在(エロース、アモル、プット)、鏡、花、そして鳥である。鳩・雀・白鳥がこの役割に集まるのは偶然ではないが、なぜかは体系ごとに理由が違う。裸体表現がこの役割から始まるのはギリシア以降のことで、前350年頃の《クニドスのアプロディーテー》が起点となった。エジプトやメソポタミアの女神像は裸でも意味が異なる。
愛の神は普遍に見えて、扱う対象がずれている。婚姻の秩序を守る神(ヘーラー、ユーノー)と、それを壊す神(アプロディーテー)は別である。同じ「愛」の一語に入れてしまうと、この対立が読めなくなる。
この役割の神格
32柱を収載(知名度順)
ヒンドゥー神話
クリシュナ
कृष्ण — 愛と美の神
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ギリシア神話
アプロディーテー
Αφροδίτη — 愛と美の神
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ローマ神話
ウェヌス
Venus — 愛と美の神
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ギリシア神話
エロース
Ἔρως — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
パールヴァティー
पार्वती — 愛と美の神
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北欧神話
フレイヤ
Freyja — 軍神
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エジプト神話
ハトホル
ḥwt-ḥrw — 天空神
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ローマ神話
クピードー
Cupido — 愛と美の神
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メソポタミア神話
イナンナ
𒀭𒈹 — 軍神
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メソポタミア神話
イシュタル
𒀭𒈹 — 軍神
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フェニキア・カナン神話
アスタルト
ʿAṯtart — 軍神
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ヒンドゥー神話
カーマデーヴァ
कामदेव — 愛と美の神
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ギリシア神話
ヘルマプロディートス
Ἑρμαφρόδιτος — 愛と美の神
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アステカ神話
ショチケツァル
Xōchiquetzal — 愛と美の神
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アステカ神話
ショチピリ
Xōchipilli — 愛と美の神
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ケルト神話
オェングス
Óengus — 愛と美の神
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アステカ神話
トラソルテオトル
Tlazōlteōtl — 愛と美の神
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アフリカ神話
オシュン
Ọṣun — 水神・海神
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ケルト神話
エーディン
Étaín — 愛と美の神
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ケルト神話
ディルムッド・オディナ
Diarmuid Ua Duibhne — 軍神
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ケルト神話
ファンド
Fand — 水神・海神
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エトルリア神話
トゥラン
turan — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
ウルヴァシー
उर्वशी — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
メーナカー
मेनका — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
ラムバー
रम्भा — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
ティローッタマー
तिलोत्तमा — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
プラデュムナ
प्रद्युम्न — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
ラティ
रति — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
ウシャー
उषा — 愛と美の神
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ヒンドゥー神話
トリプラ・スンダリー
त्रिपुरसुन्दरी — 愛と美の神
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ケルト神話
クリーナ
Clíodhna — 愛と美の神