ティローッタマー
ティロッタマー · ヴィシュヴァカルマンの造形
ヴィシュヴァカルマンがあらゆるものの最良の微片から造り出した天女。二人の魔神の兄弟を同士討ちによって滅ぼしている天女。
解説
概要
ティローッタマー(Tilottamā / तिलोत्तमा)は、工匠神ヴィシュヴァカルマンがブラフマーの命によって造り出したアプサラスである。名は「一粒ずつの最良」を意味し、あらゆるものの最も優れた微片を集めて形づくられたことに由来する。互いに以外では討たれぬ恩寵をもつ魔神スンダとウパスンダを、同士討ちによって滅ぼすために遣わされた。
神話・物語
『マハーバーラタ』第一巻が伝える。ダイティヤの兄弟スンダとウパスンダは苦行によってブラフマーから恩寵を得た。互いに討つ以外に死をもたらす手立てはないという不死である。二人は三界を席巻し、神々も聖仙も追い散らされた。
そこでブラフマーはヴィシュヴァカルマンに、比類なく美しい女を造るよう命じた。工匠神は世界のあらゆるものから最も優れた微片(ティラ)を一つずつ集め、これを寄せ集めて一人の女とした。名はこれに由来する。彼女に与えられた務めは、二人の兄弟を互いに争わせることであった。
森で二人の前に姿を現した彼女を、兄弟はそれぞれ我がものにしようとする。一方が右手を、他方が左手を取って譲らず、やがて棍棒をとって争い、互いを打ち殺した。恩寵の条件がそのまま滅びの手立てとなる。
彼女が去るとき、シヴァは彼女を見送ろうとして四方に顔を生じさせたとも語られる。シヴァが四面をもつ由来を説く説話の一つである。また彼女が去ったのちにインドラが千の眼を得たとする伝えもある。
図像と象徴
固有の像容は定まっていない。図像に現れるとすれば、争う二人の魔神のあいだに立つ場面である。象徴となるのは、集められた微片そのものである。世界中から最良のものだけを集めて造られた存在が、その美しさによって二人を滅ぼすという構成は、美が武器として用いられる例として繰り返し論じられてきた。
系譜と関係
ヴィシュヴァカルマンの手になる造形物であり、通常の系譜をもたない。造ったのは工匠神、命じたのはブラフマー、使命を与えられた相手はスンダとウパスンダである。天界のアプサラスの一人に数えられ、ウルヴァシー、メーナカー、ラムバーらと並べられる。
文化的足跡
聖仙ドゥルヴァーサスの呪いによって人間界に生まれ変わり、マハーバーラタの女性の一人となったとする伝えもある。造られた存在という点で、彼女はインド神話における人工の美女の原型に位置づけられる。武器としての美という主題は近現代の批評でもしばしば取り上げられ、造る側と造られる側の関係を問う読みが加えられてきた。