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ディルムッド・オディナ
PLATE — DIARMUID UA DUIBHNE
CELTAE · ケルト神話
DIARMUID UA DUIBHNE

ディルムッド・オディナ

ディルムッド · ディルムット · デルムッド

Stephen Reid(1910年) PUBLIC DOMAIN

アイルランドのフィン物語群の英雄。オェングスの養子で、女を惹きつける愛の黒子を額に持つ。フィンの許嫁グラーニャと駆け落ちし、猪に討たれて死んだ。

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解説

概要

ディルムッド・オディナ(Diarmuid Ua Duibhne、「ディブネの孫ディルムッド」)は、フィン物語群に語られるアイルランドの英雄である。フィアナの一員で、オェングス・オグの養子としてブルー・ナ・ボーニャで育った。額に女を惹きつける黒子(ボール・シェルケ、「愛の黒子」)を持つことから「愛の黒子のディルムッド」とも呼ばれる。物語の時代は伝統的に2〜4世紀に置かれる。

神話・物語

父はフィアナのディブネの子ドン、母はカハール・モールの娘コフランである。生まれた頃、父が争いのためにフィアナを追われたので、彼はオェングスに引き取られた。のちに母が下男ロクとのあいだにもう一人の子を産むと、オェングスはその子も養子に迎える。しかし嫉妬した父ドンがその子を殺し、ロクはドルイドの助けで我が子を猪に変えて、ディルムッドを死に至らしめるゲッシュを負わせた。

長じて彼はフィアナ屈指の戦士となり、一度は三千の敵を単身で討ったと伝えられる。狩りの帰りに迷い込んだ庵で、老人と娘と猫に出会う話がある。娘は「若さ」の化身であり、かつて自分は彼らのものだったがもう戻れないと言って男たちを退け、ディルムッドにだけ愛の黒子を印した。

雪の夜、みすぼらしく醜い女がフィアナの宿を訪れ、床を分けてほしいと乞う。断らなかったのはディルムッドだけだった。朝、女は若く美しい姿となり、丘の上には調度も従者も揃った館が現れる。ともに住まうにあたって彼女が課した条件は、出会った夜の醜さを三度口にしないことだった。彼が三度それを口にしたとき、女も館も消える。彼は「波の下の国」まで彼女を追い、遠い「不思議の平原」の王から癒しの杯を得て病を癒すが、その代償として彼女への愛もまた失われる。

最も知られるのは『ディルムッドとグラーニャの追跡』である。年老いたフィンに上王コルマク・マク・アルトの娘グラーニャが許されるが、婚礼の宴でグラーニャはディルムッドに目を留め、酒で一同を眠らせて駆け落ちを迫った。断る彼に彼女は呪いをかけ、ディルムッドは是非もなく従う。二人は川を渡り、沼を越え、洞に眠りながら逃げ続けた。養父オェングスは幻視で危難を知るたびに駆けつけ、外套に隠してグラーニャを救い出す。ドヴロスの森では、若さを取り戻す実のなるナナカマドを守る巨人シャルヴァンを、その棍棒で討った。

やがてオェングスの仲裁でフィンは和解し、二人はスライゴ州ケシュ・コランに砦を築いて五人の子を儲ける。数年ののち、グラーニャに勧められて開いた宴にフィンを招いたことが破局を呼ぶ。ベン・ブルベンの猪狩りに誘われたディルムッドは、最上の武具を持たずに出て、多くの人と犬を屠ってきた猪に突かれた。フィンの手で掬った水には癒しの力があったが、彼は二度まで指のあいだから水を落とす。孫オスカルに責められて三度目を運んだときには、すでに手遅れだった。オェングスは遺体をブルーへ運び、語りたいときに息を吹き込んだという。

図像と象徴

古代の図像はない。本サイトが掲げるのはスティーヴン・リードの挿絵(1910年、ロールストン『フィンの高き功業』所収)で、ケルト復興期の視覚化の一例である。

伝承上の標識は三つある。第一に額の黒子。武勇ではなく容姿によって物語が動く英雄はアイルランド伝承では珍しく、グラーニャの一目惚れも、庵の娘の印も、この一点に発している。

第二に武器。マナナン・マクリルからオェングスを経て渡った剣モラルタハ(「大いなる怒り」)とベガルタハ(「小さき怒り」)、そして二本の槍ゲイ・ジャルグとゲイ・ボイである。追跡の物語では、この槍を支えに跳躍してフィンの包囲を跳び越える場面が語られる。

第三に猪。彼を養う家の血縁から生まれ、ドルイドの呪で猪に変えられた異父弟が、そのまま彼を殺す定めとなる。ゲッシュ(禁忌の縛り)が生い立ちから死まで一本の線で通っているところに、この英雄の造形の特徴がある。

系譜と関係

父はドン(コルクとも)、祖父はフィアナのディブネ、母はコフラン(クロフナト)。養父はオェングス・オグ。妻はグラーニャで、ドンハズ、イラン、ルフラズ、ヨルアズら四人の息子と一人の娘を儲けた。フィンとは主従であり、また恋敵である。

スコットランドのキャンベル氏族は彼を始祖と仰ぐ。氏族の紋章に猪の首が用いられるのは、彼のゲッシュと死に由来する。

文化的足跡

『ディルムッドとグラーニャの追跡』は、老いた王・若い妃・若い戦士という三角関係の物語として、アルスター・サイクルの『ウシュネハの子らの流離』(デアドラ、ノイシュ、コンホヴァル)としばしば比較される。アーサー王物語のトリスタンとイゾルデとの並行を説く議論も古くからあり、ケルト起源説の主要な論拠の一つとされてきた。ただし影響の方向と経路は決着していない。

アイルランド各地に点在する巨石墓(ポータル・トゥーム)の多くは「ディルムッドとグラーニャの寝床」と呼ばれ、逃避行の夜ごとの宿と結びつけられている。先史の遺構に中世の物語を重ねる、地名譚の典型である。現代の幻想文学やゲーム作品には、二本の槍と愛の黒子を持つ騎士としてしばしば登場する。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1209163 — 骨格データの出典