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オェングス
PLATE — ÓENGUS
CELTAE · ケルト神話
ÓENGUS

オェングス

オィンガス · オィングス · エンガス

John Duncan(1908年) PUBLIC DOMAIN

アイルランド神話の若さと愛の神。ダグザとボアンの子で、言葉の綾によって父からブルー・ナ・ボーニャを奪い、夢に見た乙女を白鳥の姿のまま連れ去った。

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解説

概要

オェングス(Aengus、古アイルランド語 Óengus / Oíngus)は、トゥアハ・デ・ダナーンの一員で、若さ、愛、詩的霊感を領分とする神である。マカン・オク(「若き子」)、オェングス・オグ(「若きオェングス」)など、「若さ」を含む添え名で呼ばれる。

名の古い形は7世紀末のアダムナーン『コルンバ伝』に Oinogus(s)ius として現れ、ケルト祖語の「真の力」に遡るとみられる。一方『ディンシェンハス』はこれを「ただ一つの願い」と解し、ダグザとの契りこそ自分の唯一の願いだったからボアンがそう名づけたのだと説明する。中世の民間語源であって語学的な裏づけはないが、この神の人物像はよく言い当てている。ケルト学者ジョン・T・コッホとケネス・ジャクソンは、ピクトの人名オヌイスト、古ウェールズ語のウヌストを同源とみる。

神話・物語

誕生の物語は、ブルー・ナ・ボーニャの主エルクマルの妻ボアンにダグザが通じたことに始まる。ダグザはエルクマルを一日の使いに出し、そのあいだ太陽を止めて時の流れを隠した。九か月が一日に畳み込まれ、そのあいだにオェングスが生まれる。

長じて実の父を知った彼は、土地を求めた。『エーディンへの求婚』が伝える形——おそらく最も古い形——では、ダグザの助けを得てエルクマルからブルー・ナ・ボーニャを奪う。彼が求めたのは「ラー・オクス・アイヘ」であった。古アイルランド語のこの句は「一日と一夜」とも「昼と夜」とも読める。昼と夜が続くかぎり、すなわち永遠に、とオェングスは主張して塚を手に入れた。別の伝えでは、同じ言葉の綾で父ダグザ自身から奪ったとする。塚はのちに「マカン・オクの館」と呼ばれた。

この話をブルー・ナ・ボーニャ(ニューグレンジ)の冬至の日照——羨道が朝日を奥室まで導く現象——の説話化とみる読みがある。アイルランド語で冬至を grianstad(太陽の静止)と呼ぶことがその傍証とされ、奥室をボアンの胎、差し込む光をダグザに擬する解釈もある。一方ダーヒ・オホーガンは、「若さの盛りにあっては時が遅く流れ、生命力が永遠に思える」という観念の劇化とみる。

『二つの乳桶の家の養育』では、マナナン・マクリルがオェングスに「幸と栄え」と題する詩を唱えさせ、その呪でエルクマルをブルーから追う。エルクマルは、頼まれれば与えたのだと告げ、しかしマナナンの呪ゆえに自分と一族は生涯の禍と狂気を負うと言い残す。この伝えのオェングスは、追放したことを悔いている。

『エーディンへの求婚』では、養父ミディールのために彼が娶らせた美女エーディンが、先妻フアヴナハの嫉妬によって蠅に変えられる。オェングスはその蠅がエーディンであることを見抜き、窓のある小さな部屋を作って持ち歩き、夜のあいだだけ人の姿に戻した。フアヴナハの起こした風が再びエーディンを吹き飛ばすと、彼はこの養母を討った。

最も知られるのは『オェングスの夢』である。夢に現れた乙女に恋い焦がれて彼は病み、原因を恋の病と見抜いたのは医の神フィンゲンだった。母ボアンが一年、父ダグザがさらに一年アイルランドを探し、最後にムンスターの王ボズヴ・ジャルグが見つけ出す。乙女はカール・イボルメイスといい、竜の口の湖に、二羽ずつ銀の鎖でつながれた百五十人の娘とともにいた。彼女らは一年ごとに人と白鳥の姿を交互にとる。サウィンの日、白鳥の姿の彼女を見分けられれば娶ってよいと告げられたオェングスは、自ら白鳥となって飛び、二羽は三日三晩眠りを誘う調べを奏でながら去った。

図像と象徴

古代の図像はない。オェングスの視覚像はケルト復興が作り出したものである。本サイトが掲げるジョン・ダンカンの《アンガス・オグ》(1908年)はその代表格で、口づけから生まれた小鳥を頭のまわりに舞わせた若者として彼を描く。ラファエル前派の様式に島嶼装飾写本の意匠を重ねた画面であり、20世紀初頭のスコットランドがケルトの過去をどう見たかを示す資料でもある。

伝承の側で標識となるのは鳥である。スコットランドの民話は、彼の口づけが目に見えぬ小鳥となって恋人たちに付き添い、耳もとで恋の歌をささやくと語る。『ディンシェンハス』には、口づけを四羽の鳥に変えてカルブレを日々嘲らせ、ドルイドが木に呪をかけてようやくその鳥を捕らえたという話がある。白鳥もまた標識で、彼自身が白鳥に変じてカールを連れ去った。

持物も伝わる。マナナン・マクリルから贈られた剣モラルタハ(「大いなる怒り」)を、彼は養子ディルムッド・オディナに与えた。スコットランドの伝承では銀の弦を張った金の竪琴を持ち、それを弾けば若い男女が音を追って森を行くという。

系譜と関係

父はダグザ、母はボアン。養父はミディールとも、エルクマルとも伝わる。兄弟姉妹にはアド、ケルマイト、ボズヴ・ジャルグ、ブリギッドの名が挙がる。フィアナのディルムッド・オディナは養子であり、フィンに追われる彼とグラーニャを繰り返し救い、ディルムッドが死んだのちは遺体をブルーへ運んで、語りたいときに息を吹き込んだという。

スコットランドの民間伝承では系譜が大きく変わる。冬を支配する老女ベーラ(カリアッハ)の子とされ、妃はブリギッドである。冬のあいだティル・ナ・ノーグに留まり、夢に見たブリギッドを求めて白馬で出立し、春の初日に彼女と出会う。花が咲き草が伸び、二人は夏の王と妃となる。中世アイルランドの文献にはない、近代スコットランドで採集された伝承である。

ウェールズのマボン・アプ・モドロン、ガリアの碑文に名を残すマポノスとの対応は、いずれも「若き子」を意味する名の一致に基づく。名の系統としては有力だが、物語の内容まで受け継がれたことを意味しない。

文化的足跡

W・B・イェイツの詩「さまよえるアンガスの歌」(1899年)は、夢に見た娘を生涯探し求める男の歌としてこの名を近代文学に定着させた。ジェイムズ・スティーヴンズの小説『黄金の壺』(1912年)にも助力者として現れる。今日流通する「愛の神オェングス」という像は、ケルト復興期のこれらの作品を直接の源とする。現代の幻想文学やゲーム作品にも、若き愛の神としてしばしば登場する。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

収載データなし
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資料

Wikidata
Q544389 — 骨格データの出典
Commons
Aengus — 図像カテゴリ