ウシャー
ウシャー姫 · バーナースラの娘 · アニルッダの妃
アスラ王バーナースラの娘でアニルッダの妃。夢に見た若者を、友の描いた絵によって突き止めた説話で知られる王女である。
解説
概要
ウシャー(Uṣā / उषा)は、アスラ王バーナースラの娘であり、アニルッダの妃である。夢に見た若者に恋し、友人チトラレーカーの描いた絵によってその正体を突き止めた説話で知られる。名は「暁」を意味するが、ヴェーダの暁の女神ウシャスとは別の存在である。
神話・物語
『バーガヴァタ・プラーナ』第十巻が伝える。父バーナースラはショーニタプラを都とする千手のアスラ王で、シヴァの熱心な信者であった。彼女はパールヴァティーに仕えて祭を営み、女神から、いずれ夫となる者を夢に見るであろうと告げられていたともいう。
ある夜、彼女は見も知らぬ若者と結ばれる夢を見て目覚め、恋に落ちた。相手が誰かを知る手立てはない。友人であり大臣クンバーンダの娘であるチトラレーカーは、行の力と絵の技に長けており、神々からアスラ、人に至るまでの姿を次々に描いてみせた。ウシャーが指したのが、ヤーダヴァのアニルッダである。チトラレーカーは夜のうちにドヴァーラカーへ飛び、眠る彼をそのまま運んできた。
匿われていたことが露見すると、父は兵を差し向けた。アニルッダは門の閂を武器に戦ったが、ついにナーガの縛によって捕らえられる。数か月ののち、ナーラダの知らせを受けたクリシュナがバララーマとプラデュムナを伴って軍を率い、都を囲んだ。バーナースラの側にはシヴァとスカンダが加勢し、大きな戦いとなる。
勝敗が決したのち、シヴァが信者の助命を請い、クリシュナは千の腕のうち四本を残して切り落とすにとどめた。彼女はアニルッダとともにドヴァーラカーへ迎えられ、婚礼が営まれたと語られる。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、チトラレーカーの描いた絵を前に相手を指す場面である。象徴となるのは、その絵そのものである。見たことのない相手を絵によって特定するという主題は、インドの説話文学と細密画において好んで扱われてきた。
系譜と関係
父はバーナースラ、その父はバリ、さらに遡ればプラフラーダの家系に連なる。夫はアニルッダで、その父がプラデュムナ、祖父がクリシュナである。アスラの家系とヤーダヴァの家系が、この婚姻によって結ばれることになった。友人チトラレーカーは大臣クンバーンダの娘とされる。
文化的足跡
アッサム州テズプルには、この説話の舞台とされる地が伝えられ、アグニガルの丘は父が娘を隔てるために火の砦を築いた場所とされる。地名アグニガル(火の砦)はこれに由来すると説明される。
夢に見た相手を絵によって探し当てるという筋立ては、後代の詩と演劇に繰り返し取り上げられた。オリッサやアッサムの民間演劇には、この一段を独立した演目とするものがある。ウシャー・ハラナ(ウシャーの略奪)またはウシャー・パリナヤ(ウシャーの婚礼)の題で知られる。