クレイオス
クリーオス · クリオス · Crius
ウーラノスとガイアの子であるティーターン。エウリュビアーとのあいだにアストライオス、パラース、ペルセースをもうけた。個性の乏しさで知られる。
解説
概要
クレイオス(Κρεῖος / Crius)は、ウーラノスとガイアの子で、ティーターン神族の一柱である。ギリシア語クリオスは「雄羊」を意味するため、その名を「天の雄羊」と訳す資料があるが、この神は冥界に落とされた側に属しており、黄道十二宮のおひつじ座と古典期に結びつけられた形跡はない。十二のティーターンのなかで、もっとも個性を欠く一柱とされる。
神話・物語
ヘーシオドス『神統記』によれば、ガイアとポントスの娘エウリュビアーとのあいだに、アストライオス、パラース、ペルセースの三柱をもうけた。この三人がクレイオスの存在意義をほぼ規定している。アストライオスは暁の女神エーオースと結ばれ、明けの明星エーオスポロス、宵の明星ヘスペロス、そして四方の風を生んだ。パラースは冥河の女神ステュクスを妻とし、ニーケー・クラトス・ビアー・ゼーロスの父となった。ペルセースはアステリアーとのあいだにヘカテーをもうけた。星々と風、ゼウスの権力を支える四柱、そして三界に分け前を持つ女神——いずれもクレイオスの孫の世代である。
ティーターノマキアーでは他の兄弟とともに戦って敗れ、タルタロスへ落とされた。ただし固有の役回りは何も語られない。
この空白について、M・L・ウェストは示唆に富む指摘をしている。ヘーシオドスは、オリュンポスの十二神に数を合わせるために、核となる神々の一覧を後から補ったのではないか。デルポイの古い伝承に属するコイオス・ポイベー・テミスがそこで加えられ、クレイオスもまた、ペルセースの父つまりヘカテーの祖父として必要だったから組み込まれたのだ、というのである。ヘーシオドスがヘカテーに異例の讃辞を捧げていることを考えれば、この読みには説得力がある。もっともこれは20世紀の学説であって、原典がそう述べているわけではない。系譜が神学的な要請から編まれることがあるという視点として受け取るべきものである。
図像と象徴
名を明示した古代の作例は知られていない。ペルガモンの大祭壇の巨人戦争浮彫でも、この神は確認されていない。子や孫の代には図像を持つ神格がいるにもかかわらず、当人には何も残らなかった。本項では主画像を置いていない。
系譜と関係
父ウーラノス、母ガイア。同胞はオーケアノス、コイオス、ヒュペリーオーン、イーアペトス、クロノス、テイアー、レアー、テミス、ムネーモシュネー、ポイベー、テーテュース。妻エウリュビアーはティーターンの世代ではなく、ガイアとポントスの系統に属する。子はアストライオス、パラース、ペルセース。
文化的足跡
天文の分野でこの名が用いられることはほとんどない。兄弟たちが土星の衛星に名を連ねるなか、クレイオスは目立たぬまま残されている。神話における位置づけが、そのまま後世の扱いに反映された恰好である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。