コイオス
コイオス · ポーロス · Koios
ウーラノスとガイアの子であるティーターン。ポイベーを妻とし、レートーとアステリアーを生んだ。アポローン・アルテミス・ヘカテーの祖父にあたる。
解説
概要
コイオス(Κοῖος / Coeus)は、ウーラノスとガイアの子で、ティーターン神族の一柱である。名の解釈は定まっていない。ギリシア語コイオスを「天球」と読み、別名ポーロス(「天の極」)に結びつける理解が日本語の事典では一般的だが、英語圏では「問う」を意味する動詞コイエオーに関連づけて「問いかけ」と解する説も広く紹介されている。いずれも確たる語源とは言いがたい。妹ポイベーを妻とし、レートーとアステリアーの二女をもうけた。
神話・物語
固有の物語をほとんど持たず、ティーターンの一覧に名を連ねるだけの神である。その重みは、もっぱら子孫の側にある。レートーはゼウスとのあいだにアポローンとアルテミスを産み、アステリアーはクレイオスの子ペルセースとのあいだにヘカテーを産んだ。すなわちコイオスは、デーロスの双子と、天地海に分け前を持つ女神の祖父にあたる。
ティーターノマキアーでは敗れ、オーケアノスを除く兄弟たちとともにタルタロスへ落とされた。後代のローマの叙事詩、ウァレリウス・フラックス『アルゴナウティカ』には、コイオスが狂気に駆られて鎖を引きちぎり牢を出ようとしたが、ケルベロスに阻まれたという場面がある。ティーターンのなかで脱獄を試みる者として描かれるのはこの神だけで、ヘレニズム以降の詩人が空白の神格に与えた造形といえる。
タキトゥスは、コース島の最初の住人がコイオスだったと記す。娘レートーの生地を主張していた島にとって、この系譜は由緒の裏づけとなる。島名との近さから神名がコイオスからコーイオスへ変形したとも説明されており、地名と神名が互いを補強し合う典型的な例である。
図像と象徴
名を明示した古代の作例は知られていない。ペルガモンの大祭壇の巨人戦争浮彫には妻ポイベーと娘たちが銘とともに現れるが、コイオス自身は確認されていない。系譜のうえでは重要でありながら、崇拝も造形も受けなかった神格である。本項では主画像を置いていない。
系譜と関係
父ウーラノス、母ガイア。同胞はオーケアノス、クレイオス、ヒュペリーオーン、イーアペトス、クロノス、テイアー、レアー、テミス、ムネーモシュネー、ポイベー、テーテュース。妻はポイベー、子はレートーとアステリアー。孫にアポローン、アルテミス、ヘカテー。
文化的足跡
固有名としてはほとんど流通せず、後世の文学が単独で取り上げることもまれである。系譜の書き手にとってのみ必要とされた神格の、典型的な運命といえる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。