ウーラノス
ウラノス · ウラヌス
ギリシア神話の原初の天空神。大地の女神ガイアから生まれてその配偶者となり、多くの神々をもうけた。子を疎んじたため、末子クロノスに鎌で去勢され、天の支配を奪われる。
解説
概要
ウーラノス(Οὐρανός)は、ギリシア神話における天空の神であり、世界の初めに現れた原初神である。その名はそのまま「天」を意味する。大地の女神ガイアの子にして配偶者となり、神々の第一世代を父としてもうけた。
神話・物語
ヘシオドス『神統記』によれば、ウーラノスはガイアが独力で生んだ天空であり、やがて母と交わってクロノスをはじめとする十二のティーターン神族、隻眼のキュクロプス、百手のヘカトンケイルを得た。しかしウーラノスは我が子らを嫌い、生まれるそばから大地の奥(タルタロス)へ押し込めた。
これを憎んだガイアは鋼の大鎌を作り、子らに父への反逆を促す。応じたのは末子クロノスであった。クロノスは待ち伏せて父を去勢し、切り取った男根を海へ投げる。滴った血からは復讐の女神エリニュス、巨人ギガース、トネリコの精ニンフ(メリアイ)が生まれ、海に落ちた男根の泡からはアプロディーテーが生じたと伝えられる。去勢によってウーラノスは天へと退き、以後は物語の表舞台から姿を消す。去り際に、自らの子もまた子に倒されると予言したとする異伝もある。
図像と象徴
天空そのものであるウーラノスは、独立した図像に乏しい神である。ギリシア・ローマの美術では、しばしば弧を描く天蓋(マント)を頭上に広げる姿で、天球の擬人として表された。この型はローマの天空神カエルスと共有され、アウグストゥス帝の胸甲像などにも認められる。物語の場面としては、クロノスによる去勢が繰り返し主題となり、ルネサンス以降はジョルジョ・ヴァザーリの壁画のように、鎌を振るう瞬間が寓意画として描かれた。
系譜と関係
母にして妻はガイア。子はクロノス・レアーら十二のティーターン神族、キュクロプス、ヘカトンケイルなど。孫の世代にオリュンポスの神々を生むゼウスがおり、ウーラノスは神々の家系の起点に立つ。ローマ神話では天空神カエルスと同一視された。
文化的足跡
父を倒して権を継いだ子が、やがて自らも子に倒される——ウーラノス、クロノス、ゼウスと続く簒奪の連鎖は、王権交代神話の原型としてしばしば論じられる。天王星(Uranus)の名は彼に由来し、太陽系の惑星でただ一つギリシア名を負うものとして知られる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。