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ポントス
PLATE — ΠΌΝΤΟΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΠΌΝΤΟΣ

ポントス

ポントゥス · Pontos · Pontus

CristianChirita CC BY-SA 3.0

ギリシア神話の原初の海神。海そのものを神格化した存在で、ガイアが単独で生んだ。海の神々と怪物たちの祖にあたる。

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解説

概要

ポントス(Πόντος / Pontus)は、海そのものを擬人化したギリシアの神である。ヘーシオドス『神統記』では大地の女神ガイアが配偶者を介さず単独で生んだ子とされ、天空ウーラノスや山々ウーレアと同じ層に属する原初神の一柱にあたる。物語をまったく持たず、系譜の文脈でのみ言及される神格である。にもかかわらずこの神が重要なのは、海の神々と海の怪物たちがそろってその子孫として整理されているからである。

なお、同じく海を司るオーケアノスとは位置づけが異なる。オーケアノスは世界を取り巻いて流れる大河でありティーターンの世代に属するのに対し、ポントスは海という広がりそのもので、ティーターンより前の層に置かれる。

神話・物語

『神統記』が語るポントスの子は五柱である。ネーレウスポルキュースの二柱の海神、海の怪物ケートー、そしてタウマースエウリュビアー。いずれも母はガイアで、この場合は母が子と交わったかたちになる。M・L・ウェストは、この五柱がみな海に住まうと見てよいとする。

フランシスコ・ディエス・デ・ベラスコは、この顔ぶれを古拙期(前800年頃から前480年頃)の船乗りが経験した海の二つの相の反映と読む。ネーレウスが穏やかで恵み深い海を、ポルキュース・ケートー・エウリュビアーが怪異に満ちた海を表す、というのである。怪物たちがオリュンポスの主要な神々から系譜のうえで遠ざけられ、この一族に振り分けられているのは、その恐ろしさゆえだと説明される。ゴルゴン姉妹もグライアイもラードーンも、たどればここへ行き着く。

異伝もある。前7世紀後半以降に成立した叙事詩『ティーターノマキアー』の断片は、ポントスとガイアの子としてアイガイオーンを挙げ、この者がティーターンの側について戦ったと伝えた。ヒュギーヌス『神話集』は系譜そのものを組み替え、ポントスをガイアとアイテール(上天)の子とし、配偶者をマレ(Mare、「海」の意)とする。シモン・ホーンブロワーは、このマレを名を変えたタラッサ、すなわちやはり海の女神とみる。この夫婦からはあらゆる魚が生まれたという。12世紀ビザンツの詩人ツェツェースは、鍛冶と魔術に長けた種族テルキーネスをポントスとガイアの子とする古人の説を伝えている。

図像と象徴

古代の作例は少ないが、確実なものが残る。スペインのメリダから出土した2世紀後半から3世紀初頭のローマ期多色モザイクは、宇宙の生成に関わる神々を並べた大画面で、そのなかにポントスの名が銘とともに記されている。ただし損傷が激しく、裸足の両足、片脚、片手しか残っていない。位置は画面の最下部で、オーケアノスら海の存在と同じ帯に配される。ディエス・デ・ベラスコは、ここでのポントスが「航行しうる海」、すなわちローマの力によって馴らされた海を表すとみる。チュニジアのアコッラ出土のモザイク(バルド国立博物館)にも、名を添えたポントスが現れる。

本項に掲げたのは、2世紀のローマ期大理石像である。黒海西岸の都市トミス(現在のルーマニア、コンスタンツァ)の守護神として、運命の女神フォルトゥーナとポントスを組み合わせた群像で、ポントスはフォルトゥーナよりはるかに小さく、その脚もとに置かれている。海に生きる都市が、繁栄の女神に海の神を添えて祀ったことになる。ズドラフコ・ディミトロフは、この像の石工技法にアナトリア系の影響が見てとれると指摘する。

系譜と関係

母はガイア。『神統記』では父を持たない。子はネーレウス、ポルキュース、ケートー、タウマース、エウリュビアーの五柱。孫の世代には、虹の女神イーリスハルピュイア(タウマースの子)、メドゥーサらゴルゴン姉妹とグライアイ(ポルキュースとケートーの子)、そしてクレイオスと結ばれたエウリュビアーを通じてアストライオス・パラース・ペルセースがいる。プローテウスをポントスの子とする説もある。水神・海神のファセットのなかでは、海を支配する神ではなく、海という場そのものである点で最も古い層に立つ。

文化的足跡

ギリシア語のポントスは普通名詞としての「海」であり、印欧祖語の *pont-eh₁-(「道」)に遡ると考えられている。海を隔てるものではなく渡っていく道と捉える語感が、そこに残っている。この語は黒海を指してもしばしば用いられ、ポントス・エウクセイノス(「客に優しい海」)の呼称や、小アジア北岸のポントス地方の名として今日まで続いている。神格としてよりも、地名として広く生き延びた例である。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q190563 — 骨格データの出典
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Pontus (mythology) — 図像カテゴリ