パラース
パラス · パッラース · パッラス
ギリシア神話のティーターンの一柱。ステュクスを妻とし、ニーケー・クラトス・ビアー・ゼーロスの父となった。同名の神話上の人物が複数あり混同されやすい。
解説
概要
パラース(Πάλλας / Pallas)は、ギリシア神話のティーターン神族に属する神である。ヘーシオドス『神統記』によれば、ティーターンのクレイオスとエウリュビアーの子で、アストライオス、ペルセースを兄弟とする。冥河の女神ステュクスを妻とし、ゼーロス・ニーケー・クラトス・ビアーの四柱をもうけた。この四柱がゼウスの座を固める神々であるため、パラースは登場する場面をほとんど持たないまま、系譜上の要となっている。
神話・物語
固有の物語は伝わらない。ヒュギーヌスはこの神を「巨人」と呼び、ステュクスとのあいだにさらにスキュラ、泉、湖が生まれたとする。ただしクレータのエピメニデースはステュクスの夫をペイラースとし、エキドナの父としているので、この系譜自体が一様ではない。
同名の存在が多いことが、この神格を分かりにくくしている。ギガントマキアーでアテーナーに皮を剥がれたギガースのパラース、月の女神セレーネーの父とされるメガメーデースの子パラース、アルカディアの王リュカーオーンの子でパランティオンを建てたパラース、アテーナイ王パンディーオーンの子でテーセウスに滅ぼされたパラースなどがあり、いずれも別の存在である。アテーナーの添え名「パラス・アテーナー」との関係も、剥がれた皮に由来するというエピカルモスの説明を含めて諸説あるが、いずれも語呂合わせの域を出ない。『スーダ』は槍を「振るう(pallein)」に結びつけている。
図像と象徴
このパラースを名指して表した古代の作例は知られていない。ペルガモンの大祭壇の巨人戦争浮彫には銘によって名を確認できる神々が並ぶが、そこに現れるパラースはギガースのほうであり、ティーターンのパラースではない。図像を持たない神格であることそのものが、この神の性格を示している。本項では主画像を置いていない。
系譜と関係
父クレイオス、母エウリュビアー。妻ステュクス。子は勝利・力・暴力・競争心を名とする四柱。アカイアの都市ペレーネーの名はこのパラースに由来するという伝えをパウサニアースが記すが、アルゴス人はアルゴスのペレーンに由来すると主張したという。戦のティーターンと呼ばれることもあるものの、これは子らの名からの遡及的な性格付けであり、古い典拠を持たない。
文化的足跡
後世の文学・美術がこの神を単独で取り上げることはほとんどない。名の重複が整理されないまま近代の神話事典に受け継がれ、しばしば別のパラースと取り違えられてきた。同名の存在を切り分けることは、ギリシア神話を扱ううえでの基本的な作業の一つである。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。