タルタロス
Tartarus
ギリシア神話の大地の底の深淵で、それを神格化した原初神。ヘーシオドスでは金床が地から九日落ちてようやく届く深さとされる。ゼウスに敗れたティーターンやテューポーンが幽閉され、後代にはシーシュポスやタンタロスが罰を受ける場ともなった。
解説
概要
タルタロス(Τάρταρος)は、ギリシア神話における大地の底の深淵であり、同時にそれを神格化した原初神でもある。冥界ハーデースの国よりもさらに深くにあり、神々に敗れたティーターンたちが幽閉される場所として語られる。
神話・物語
ヘーシオドス『神統記』は、世界の始まりにカオス、大地ガイア、タルタロス、エロースが生じたと語る。その深さは、青銅の金床が天から落ちて九日かかって地に届き、さらに九日かかって地からタルタロスに届くほどと形容される。原初の存在としてのタルタロスは、ガイアと交わって怪物テューポーンをもうけた。ヒュギーヌスは、タルタロスをアイテールとガイアの子とする。
クロノスはキュクロープスとヘカトンケイルをタルタロスに閉じ込めた。ティーターノマキアーに勝ったゼウスは、クロノスら多くのティーターンをここへ投げ落とし、解き放ったヘカトンケイルたちに見張らせた。のちにゼウスに討たれたテューポーンも、ここへ投げ込まれた。
後代には、罪を負った者が罰を受ける場としても語られた。岩を山の上へ押し上げ続けるシーシュポス、果実と水に手が届かないタンタロス、燃える車輪に縛られたイクシーオーン、ひび割れた壺で水を運び続けるダナオスの娘たち、二羽の禿鷹に肝臓をついばまれるティテュオスである。プラトン『ゴルギアス』では、ラダマンテュス、アイアコス、ミーノースが死者を裁き、タルタロスへ送る者を決める。
図像と象徴
タルタロスそのものを人の姿に描いた図像はほとんどない。本サイトが掲げるのは、ミュンヘン古代美術博物館所蔵の黒絵式の壺の一部で、冥界でシーシュポスが岩を押し上げる罰の場面を表す。
系譜と関係
ヘーシオドスでは、カオス、ガイアに続いて生じた原初の存在で、ガイアとのあいだにテューポーンをもうけた。場所としては、死者一般が赴くハーデースの国よりも深く、ティーターンやテューポーンを閉じ込める牢獄として区別される。
文化的足跡
新約聖書『ペトロの手紙二』2章4節は、罪を犯した天使たちを神が「タルタロスに投げ込んだ」と、タルタロスに由来する動詞タルタロオーを用いて述べる。日本語訳ではふつう「地獄」と訳される。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。