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MUNDUS MYTHICUS · CH. 14 · TRICKSTERS AND MESSENGERS

境を越える者

領域を往復する者たちが、どの体系にもいる。魂を運ぶ者、言葉を運ぶ者、秩序を乱す者。この三つは「境界の神」と一括りにされやすい。だが本サイトの数字は、三つがほとんど重ならないことを示している。魂の導き手十九柱、使者十五柱、トリックスター十六柱のうち、三つすべてを兼ねるのはヘルメースとメルクリウスの二柱だけである。便利な括りが、実際には別々の三つの職能であることを、数で確かめる。

PLATE ヘルメース・ロギオス
ヘルメース・ロギオス, 原作前5世紀/ローマ期模刻.
《ヘルメース・ロギオス》(前5世紀の原作に基づくローマ期模刻、アルテンプス宮蔵)/撮影 MARIE-LAN NGUYEN, CC BY 2.5

三つのファセット

境を越える神には、三つの型がある。

魂を運ぶ者。アヌビスカローンワルキューレ。死者を生者の世界から死者の世界へ送る。第13章で見たとおり、彼らは冥界に住まず、往復する。

言葉を運ぶ者。イーリスガブリエルナイリヨーサンハ。神々のあいだ、あるいは神と人のあいだで伝言を届ける。イーリスは虹であり、天と地を結ぶ弧がそのまま職能になった。

秩序を乱す者。ロキプロメーテウスコヨーテアナンシ。規則を破り、神々を欺き、しかしその結果として火や技術や物語が人間にもたらされる。

三つはいずれも境界に関わる。だが運ぶものが違う。魂か、言葉か、それとも境界そのものを揺るがすか。

重ならない

本サイトの役割で、魂の導き手は十九柱、使者は十五柱、トリックスターは十六柱ある。三つの重なりを数えると、次のようになる。

使者とトリックスターを兼ねるのは四柱。エシュヘルメースメルクリウスナーラダ。使者と魂の導き手を兼ねるのは二柱。ヘルメースとメルクリウス。トリックスターと魂の導き手を兼ねるのも二柱。ヘルメースとメルクリウス。

三つすべてを兼ねるのは、ヘルメースとメルクリウスの二柱だけである。そしてメルクリウスはヘルメースをローマが受容した神であるから、実質的には一柱と言ってよい。

「境界の神」という括りは、ヘルメースから作られた。翼あるサンダルで神界と人界と冥界を往き来し、伝令であり、魂を導き、盗みと策略を司る。この一柱があまりに多くを兼ねたために、境界に関わる職能はすべて一つの型に見えた。だがヘルメースを除けば、三つの職能はほとんど別々の神に割り振られている。アヌビスは伝言を運ばず、イーリスは魂を導かず、ロキは誰の使いでもない。

届ける力と偽る力

使者とトリックスターの重なりは、四柱と、他の組み合わせより多い。エシュ、ヘルメース、メルクリウス、ナーラダ。この四柱は、言葉を運ぶ者であり、同時に言葉を歪める者である。

ナーラダは神々のあいだで最も早く情報を運ぶ聖仙だが、その伝言はしばしば争いを起こす。エシュは人の供犠を神々に届ける使者であり、同時に十字路で人を惑わす。北欧のラタトスクは、世界樹を駆け上り駆け下りて鷲と竜のあいだを往復するが、運ぶのは伝言ではなく悪口である。

言葉を託される者は、言葉を歪められる者でもある。届ける力と偽る力は、同じ力の裏表である。使者がトリックスターを兼ねやすいのは、この一点に発している。逆に、魂を運ぶ者がトリックスターを兼ねることは、ヘルメース以外にない。魂は歪められないからである。

道具立て

境を越える者たちには、共通の持ち物がある。翼。ヘルメースのサンダルと帽子、イーリスの背、ワルキューレの馬。杖。ヘルメースのケーリュケイオン、ローマの伝令官の杖。そして境界そのものの標識——十字路、門、橋。

エシュは十字路に祀られる。ローマのヤーヌスは二つの顔を持ち、門の神である。北欧のヘイムダルは虹の橋の番人である。ただしヤーヌスとヘイムダルは境界に立つ者であって、越える者ではない。本サイトは両者に守護の役割を与え、使者にも導き手にもしていない。境界に留まる者と、境界を越える者は、別の職能である。

判定の基準

使者の役割を与えるとき、本サイトは一つの基準を置いている。往復そのものが職能として語られているか、である。

『古事記』の国譲りの段で、タケミカヅチは高天原から出雲へ遣わされる。物語のなかで、この神は使者である。だがタケミカヅチの神格の核は武にあり、鹿島の武神として祀られた。一度使いに立ったことは、使者という職能ではない。同様に、スサノオは高天原で秩序を乱すが、本サイトはこれをトリックスターとしていない。スサノオの秩序の乱し方は、策略ではなく暴力であり、その結果として人に何かがもたらされることもない。

トリックスターは、乱すことで与える者である。プロメーテウスは火を盗んで人に与え、コヨーテは太陽を盗んで昼を作り、アナンシは物語を天の神から買い取って人に渡す。乱すだけの者は、トリックスターではなく、ただの敵対者である。

便利な括りを解く

「境界の神」という語は、三つの別々の職能を一つに見せる。ヘルメースがその三つを兼ねたために、括りは自然に見えた。だが数を見れば、括りの外にいる神のほうがはるかに多い。十七柱の導き手は伝言を運ばず、十三柱の使者は魂を導かず、十四柱のトリックスターは誰の使いでもない。

役割ページはこの三つを「魂の導き手」「使者・伝令の神」「トリックスター」と別々に立てている。それは三つが別のものだからである。三つを兼ねるヘルメースは、例外であって、型ではない。例外から型を作ると、第2章で見たミュラーの過ちを繰り返すことになる。境を越える者たちは、何を越えて何を運ぶかで、それぞれ別の場所に立っている。