ブリクリウ
ブリクリウ・ネヴサンガ · ブリックリウ · Briccriu
アイルランド神話のいさかい好きの饗応主。英雄たちに「英雄の分け前」を約束して争わせ、首斬りの遊戯を招いた。
解説
概要
ブリクリウ(Bricriu)は、アルスター物語群に登場する饗応主(ブリユー)であり、詩人であり、そして名うてのいさかい好きである。添え名ネヴサンガは「毒舌の」を意味する。
彼の役どころは一貫している。人と人のあいだに言葉を差し入れて争わせること。『ブリクリウの饗宴』は、その手口をひとつの物語に仕立てたものである。
神話・物語
彼はダウン州ダン・ルドリゲの館で、コンホヴァル・マク・ネサとアルスターの英雄たちのために豪奢な饗宴を催した。ただし評判を知る人々は容易に応じない。そこで彼は脅す。来ないならアルスターの戦士たちを互いにいがみ合わせよう。それでも駄目なら父と子を、母と娘を争わせよう。最後に、アルスターの女という女の左右の乳房を打ち合わせてやると言われて、人々はようやく承知した。
宴の席で、彼は英雄の分け前をクー・フーリンに約束し、次いでコナル・ケルナハに、さらにロイガレ・ブアダハに約束する。三人が名乗りを上げて争いが始まった。彼はそのうえ三人の妻——コナルの妻レンダヴァル、ロイガレの妻フェデルム、クー・フーリンの妻エウェル——それぞれに宴での上座を約束し、女たちが同時に館へ向かうよう仕向ける。三人の夫がふたたび刃を抜きかけたとき、クー・フーリンが館の壁を持ち上げて妻を先に入れた。館が傾き、ブリクリウは溝へ落ちた。
判定はメイヴとアリルに、次いでムンスターのクー・ロイに委ねられ、いずれもクー・フーリンを選んだが、他の二人は認めない。最後にクー・ロイが醜い大男に身を変えて現れ、首斬りの遊戯を持ちかけて決着がついた。
その後の彼は、デアドラの一件ののちフェルグス・マク・ロイヒに従ってコナハトへ亡命する。クルアハンの客となってもなお、フェルグスとその恋人フリダスのあいだに揉め事を起こした。『ネラの冒険』では、フェルグスの歌を牡の仔牛の鳴き声のようだと嘲り、フィドヘルの駒五つを投げつけられて重傷を負う。回復したものの、『クアルンゲの牛捕り』の結末で、争う二頭の牡牛に踏み殺された。
図像と象徴
図像は伝わらず、当サイトも主画像を掲げない。
この人物に結びつく標識は、器物ではなく言葉そのものである。饗応主という立場は、中世アイルランドにおいて客をもてなす義務を負う名誉ある職であった。その職にある者が、もてなしの場を争いの仕掛けに変える——物語の可笑しみはその倒錯にある。最後に牡牛に踏み殺される最期も、争いを煽った者が争いの当のものに潰されるという形をとっている。
系譜と関係
物語群のなかで彼は誰の味方でもない。アルスターに属しながら英雄たちを争わせ、コナハトへ亡命してもそこで揉め事を起こす。アイルランドのブリクリウ、ウェールズのエヴニシエン、北欧のロキは、しばしば同じ型として並べられる。ただしエヴニシエンの手段が身体的な破壊であるのに対し、ブリクリウの手段は終始、言葉と約束である。彼自身は一度も剣を抜かない。
文化的足跡
『ブリクリウの饗宴』は、12世紀の『褐色牛の書』ほか五つの写本に伝わる。英雄の分け前と首斬りの遊戯という二つの主題は、いずれもギリシアの著述家ポセイドニオスが古代ケルトの慣習として言及したものであり、後者は『サー・ガウェインと緑の騎士』の中核をなす。ダウン州ラフブリックランドの地名は、アイルランド語のロッホ・ブリクレン(ブリクリウの湖)に由来するとされ、彼はその湖を望む環状砦に住む族長だったと伝えられる。