コヨーテ
コヨーテ (神話) · Coyote · Old Man Coyote
北米先住民の多くの文化に共通するトリックスターにして文化英雄。世界の創造に関わり火をもたらす一方、貪欲と自惚れで自らの策略に嵌まる。ナバホの治療儀礼コヨーテウェイの守護霊。
解説
概要
コヨーテ(Coyote)は、北米先住民の多くの文化に共通する神話上の存在である。動物のコヨーテに基づく。
通常は男性で、おおむね人の姿をとるが、毛皮、尖った耳、黄色い眼、尾、鈍い爪といったコヨーテの身体的特徴を持つことがある。コヨーテを含む神話と伝説は、文化によって大きく異なる。
伝統的な物語におけるコヨーテの役割は、他の文化におけるレイヴンの姿と共通する特徴を持つ。
神話・物語
カリフォルニア、グレートベースン、大平原、南西部、北西太平洋岸と、北米の広い範囲で、コヨーテは主要な聖なる登場者である。多くの伝承で、コヨーテは世界の創造にかかわる。ナバホの人々の伝承では、コヨーテは最初の人々とともに下の世界から現れ、空に星を散りばめた。神々が星を整然と並べようとしていたところを、待ちきれずに毛布ごと放り投げて台無しにしたのである。マイドゥの人々の伝承では、創造者とともに世界を造りながら、死や労働や苦しみを世界に持ち込んだ。火を盗んで人々にもたらしたという話も、各地に伝わっている。
同時にコヨーテは、欲が深く、好色で、うぬぼれが強く、自分の策略にはまって失敗するトリックスターでもある。目を投げ上げて遊んでいるうちに失くしてしまい、ほかの動物の目を借りたり、死んだふりをして獲物をだましたりする。その物語の多くは笑いを伴い、若者への教えとして語られてきた。
ナバホの人々の癒しの儀礼の一つ「コヨーテウェイ」では、コヨーテが守りの霊となる。この儀礼は、病人とコヨーテ、そして世界とのあいだの調和を取り戻し、健やかさを回復させることを目指すものである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カヌーに乗るコヨーテを描いた図である。
この存在を規定するのは、創造者と愚か者の同居である。世界を作り、火をもたらし、しかし自らの欲望に負けて失敗する。北米のトリックスターは、ロキやヘルメースと比較されるが、創造そのものに関わる度合いが大きい。
動物としてのコヨーテが、人間の居住地の近くで生き、狩られても減らない適応力の高い動物であることが、この造形の背景にある。
関わる伝承
太平洋岸北西部のレイヴン、五大湖のナナボゾ、大平原のイクトミと、トリックスター兼文化英雄という位置を共有する。南西部では蜘蛛の祖母と並んで現れる。
文化的足跡
「コヨーテ」は、北米先住民の口承文学を代表する登場者として、20世紀以降の文学と研究に広く現れた。ゲーリー・スナイダーをはじめとする詩人が、この存在を主題にしている。
なお北米先住民の諸伝統は今日も継承されている生きた信仰であり、物語の多くは特定の民族・氏族に属するものとして語られる。