ヴォーロス
ヴェレス · ヴォロス
スラヴ神話の神。地下界・大地・水・家畜・富を司り、東スラヴではヴォーロスと呼ばれた。蛇や竜の姿で、天空の主神ペルーンと対をなす。恐れられると同時に豊かさをもたらす、両義的な神である。
解説
概要
スラヴ神話の神。地下界と大地、水、そして家畜や富を司る。東スラヴではヴォーロスの名で「家畜の神」として崇められ、蛇あるいは竜の姿で思い描かれた。天空の主神ペルーンと対をなす、湿り気を帯びた地下の神であり、魔術や詩歌、契約の守り手ともされた。恐れられると同時に、豊かさをもたらす者として崇められた、両義的な神である。
神話・物語
ヴェレスの物語の中心は、雷神ペルーンとの争いである。蛇の姿のヴェレスが地の底から這い上がり、家畜や水を奪って天へと迫ると、ペルーンが稲妻を放って追い立てる。木や石、獣へと姿を変えて逃げるヴェレスは、ついに撃たれて地下へ退き、奪われた水が雨となって解き放たれる。この争いは善悪の単純な対決ではなく、天と地、乾と湿という、世界を支える二つの力のせめぎ合いとして理解される。ヴェレスはまた、契約と誓いの神でもあった。ルーシとビザンツの条約では、武具にかけて、ペルーンとヴェレスの名において誓いが立てられたと伝えられる。
図像と象徴
ヴェレスの確かな古代像は残らないが、蛇や竜、あるいは角をもつ獣として想像された。毛深く湿ったもの、地の底に属するものが、彼の領分を象徴する。家畜の群れ、蓄えられた富、そして死者の赴く緑なす地下の野——民間伝承がのちにナヴと呼ぶ場——が、ヴェレスと結びつけられた。近代のスラヴ美術では、髭を蓄え、獣や角をまとった威厳ある姿で描かれることが多い。
系譜と関係
ヴェレスは、天と乾いた高みの神ペルーンと対をなす、地下と湿りの神である。両者の対立は、スラヴの世界像を貫く二元性の核をなす。冥界神として死者の世界を治め、同時に家畜と蓄えを司る富の神でもある点に、大地の下に富と死の双方を見た古い感覚がうかがえる。キリスト教化ののちは、家畜の守護者としての性格が聖ヴラス(聖ブラシウス)へ、地下と蛇の性格が悪魔のイメージへと、分かれて引き継がれた。
文化的足跡
家畜と富、そして地下界を司るヴェレスの信仰は、スラヴの農村の暮らしに深く根ざしていた。収穫のあと、畑に一房の穂を「ヴェレスの髭」として残す習わしなど、その名残は民俗のなかに長くとどまった。近代以降は、ペルーンと対をなすスラヴの主要な神として再び注目され、文学やゲームのなかにも姿を見せている。