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エシュ
PLATE — ÈṢÙ
AFRICA · アフリカ神話
ÈṢÙ

エシュ

エス · エシュー · エレグバ

Wellcome Collection CC BY 4.0

ヨルバ宗教の十字路と伝令の神。人の捧げた供犠を神々のもとへ運び、天と地を取り持つ。境界に立って秩序を守る一方、思い込みを崩してみせるトリックスターでもある。

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解説

概要

エシュ(ヨルバ語 Èṣù)は、西アフリカのヨルバ人が奉じる十字路と伝令の神で、オリシャの一柱である。エシュ・エレグバ、エレグバラとも呼ばれる。人が捧げた供犠(エボ)を神々のもとへ運んで天(オルン)と地(アイエ)を往還する使者であり、同時に人も神も定めを違えぬよう監視する法と誓約の神である。十字路・戸口・市場といった境界に社を構える守護神・境界の神であり、思い込みや偏りを暴いてみせるトリックスターでもある。ヨルバの四日週では、他のオリシャがそれぞれの祭日を持つのに対し、エシュだけは毎日が自らの日とされる。

神話・物語

最もよく知られるのは、片側だけ色の違う帽子をめぐる一話である。畑を挟んで働く二人の親友の前を、エシュはその帽子をかぶって通り過ぎる。日が暮れて「あの男は赤い帽子だった」「いや白かった」と言い争ううち、生涯変わらぬはずの友情は壊れる。帽子の色は語り手により黒と白、赤と白などに分かれるが、要点は動かない。同じものを見ても、立つ位置が違えば見えるものは違う——エシュの悪戯はこの一点を、言葉ではなく事件によって示す。

供犠をめぐる物語も多い。イファの詩句オセ・トゥラでは、原初の神々が女神オシュンを仲間に加えなかったために地上の仕事がことごとく失敗し、天でその事情をオロドゥマレに説いたのがエシュであった。人が捧げる供物は、どれほど正しく整えられていてもエシュの手を経なければ神々に届かない。彼を敬わぬ者に災いが降るのは、気まぐれな悪意ゆえではなく、この経路が塞がれるからである。

図像と象徴

エシュはヨルバの神格のうち、最も頻繁に人の姿で彫られる一柱である。代表的なのは舞踏杖オゴ・エレグバで、跪いた人物像の後頭部から、鉤のように長く反り返る髪型が伸びる。この髪型は男性的な活力の表現と解され、その先端にもう一つの顔が彫られることがある。前後を同時に見る者、そして二面性そのものの徴である。男女一対の像を組む作例もあり、性を越境するこの神の力を示す。

像には子安貝や貨幣の連なりが幾重にも掛けられる。子安貝は富の象徴であると同時に、悪戯ではなく伝言を確かに届けてもらうための贈り物でもある。木肌はしばしば藍で染められ、白い貝との対比が二面性を際立たせる。杖に編み革の紐が付くのは、女性の信者が像を衣に留め、両手を空けて踊るためである。社では彫像ではなく、赤褐色のラテライトの塊(ヤンギ)が戸口や辻に据えられて、エシュそのものを表すこともある。配される色は赤と黒である。本項の図版は19世紀末から20世紀初頭のヨルバの木彫で、跪坐と長大な髪型というこの神の定型を伝える。

系譜と関係

エシュはイファ占いの体系と分かちがたい。占いを司るオルンミラの盟友であり、卜占盤オポン・イファの縁にはしばしばエシュの顔が刻まれる。占いが行く先を告げても、それを実現に導く供犠はエシュを通らねばならないからである。オセ・トゥラの伝えでは、オシュンが産んだ子オセトゥラの名が唱えられたのち、供物はエシュの手へ渡る。

アフリカ神話の神々が大西洋を越えた先で、この神は多くの名を得た。キューバのサンテリアではエレグア(Elegguá)、ブラジルのカンドンブレではエシュ(Exu)と呼ばれ、ハイチのヴォドゥではフォン人由来のロアであるレグバ(パパ・レグバ)と習合した。いずれも道を開き閉じる者として祀られる。カトリックの聖人ではパドヴァの聖アントニオ、アトーチャの聖なる幼子、聖ミカエルらが対応づけられた。ブラジルのウンバンダでは、エシュは単一の神格ではなく多数の霊の総称となり、女性形のポンバジーラを伴う。

文化的足跡

19世紀のキリスト教宣教は、この神の像を大きく歪めた。ヨルバ人でありながら少年期に奴隷として売られ、のちに初のアフリカ人主教となったサミュエル・アジャイ・クラウザーは、『ヨルバ語語彙集』(1843年)と聖書のヨルバ語訳において、「悪魔」「サタン」の訳語にエシュを充てた。以後の辞書がこれを踏襲し、ヨルバ社会自身にも定着したこの等置は、近年になって研究者と活動家の批判にさらされ、訂正を求める運動が続いている。

一方、大西洋の向こう側で、エシュはまったく別の生を得た。文学研究者ヘンリー・ルイス・ゲイツ・ジュニアは『シグニファイング・モンキー』(1988年)の冒頭にエシュ・エレグバラを置き、解釈と語りの遊戯の祖型としてアフリカ系アメリカ文学の理論の起点に据えた。境界に立ち、意味を揺さぶる神は、比喩そのものの神として読み直されたのである。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
エレグア 同一視
キューバのサンテリア(ルクミ)におけるエシュ=エレグバの呼称。同一の神格の伝播形で、聖アントニオ等と習合
レグバ アフリカ神話 同一視
ハイチのヴォドゥのロア。フォン人のレグバに遡り、十字路と伝令の機能を共有する。ディアスポラでエシュ=エレグバと同一視された
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資料

Wikidata
Q1367665 — 骨格データの出典
Commons
Eshu — 図像カテゴリ