ナイリヨーサンハ
ナイリヨー・サンハ · ネーリヨーサング · ネリヨサング
ゾロアスター教のヤザタで、アフラ・マズダーの使者を務める。天と地のあいだを行き来して神の言葉を運び、火の神アータルの伴として呼ばわれる。
解説
概要
ナイリヨーサンハ(アヴェスター語 nairyō.saŋha)は、アフラ・マズダーの使者を務めるヤザタである。名は「男らしい言葉」「英雄の告知」と解される。中期ペルシア語ではネーリヨーサング。ヴェーダのナラーシャンサに対応するが、インドではこの語はもっぱら火神アグニの称号として用いられる。使者としての性格は、両者に共通している。
神話・物語
この神格の働きは、天と地のあいだを往復することにある。アンラ・マンユが病と死を世界に持ち込んだとき、アフラ・マズダーが癒しの神アリヤマンのもとへ遣わしたのがこの使者であった。火の神アータルの伴としてともに呼ばわれることが多く、「王権の子」とも称される。その資格において、スラオシャとともにミスラの車に乗ることを許されるという。
創世の場面にも立ち会う。『ブンダヒシュン』は、原初の人ガヨーマルトが斃れたとき、放たれたその精の三分の二をこの神格が、残る三分の一を大地スプンタ・アールマティが受け止めたと伝える。四十年ののち大黄の潅木が生え、マシュヤグとマシュヤーナグが現れる。人類の始まりに、伝令が居合わせている。
図像と象徴
この神格を表した像は伝わらない。使者という働きは、姿ではなく往復そのものにあるとも言える。
系譜と関係
暦日の献辞をもたないが、パフラヴィー語文献ではアシャ・ワヒシュタの助力者に数えられる。アータルと組んで呼ばわれるのは、祈りが火の前で唱えられることによる。祈りの神スラオシャとは働きが重なるが、スラオシャが人の側の聴従を担うのに対し、この神格は神の側からの告知を担うという分担で理解されてきた。
文化的足跡
中期ペルシア語形ネーリヨーサングは人名としても用いられた。13世紀にアヴェスターとパフラヴィー語文献をサンスクリットへ訳したインドのパールシーの学僧ネーリヨーサング・ダヴァルがこの名を負っており、その翻訳は今日のアヴェスター研究の基礎資料の一つとなっている。