アイテール
アイテル · アイテール · Aither
ギリシア神話の原初神。上天の澄んだ大気を神格化したもので、エレボスとニュクスの子、ヘーメラーの兄妹にあたる。
解説
概要
アイテール(Αἰθήρ / Aithēr)は、上天の輝く大気を神格化したギリシアの原初神である。古代ギリシア人は空を上下に分け、上方の澄んだ気をアイテール、地表近くの空気をアーエールと呼んだ。神々が呼吸するのはアイテールのほうである。
神話・物語
ヘーシオドス『神統記』では、エレボス(幽冥)とニュクス(夜)の子で、ヘーメラー(昼光)と兄妹である。闇と夜から気と光が生まれるという、親子が対をなす配置になっている。
系譜は伝承ごとに動く。ヒュギーヌス『神話集』では彼はヘーメラーと交わってガイア・ウーラノス・タラッサを生んだとされ、原初神の順序が『神統記』と入れ替わる。オルペウス系のヒエローニュモス神統記では、蛇の姿をした時の神クロノスがカオス・アイテール・エレボスを生んだとする。
固有の物語はほとんどない。この神が生き延びたのは、むしろ哲学と自然学の語としてである。アリストテレスは、地上の四元素とは別に天体の円運動を担う第五の元素をアイテールと呼んだ。神話の語が、そのまま宇宙論の術語に転じている。
図像と象徴
ペルガモンの大祭壇のギガントマキアー浮彫に、獅子頭の巨人と組み合う神が表されており、アイテールと同定するのが通説である。本ページの主画像はこの浮彫にあたる。基壇の銘によって多くの神格が名指しできるこの浮彫は、独立した図像をほとんど持たない原初神にとって数少ない手がかりである。
これ以外に確実な作例は知られていない。光そのものを神として描く手立てがないという事情は、カオスやエレボスと共通する。
系譜と関係
エレボスとニュクスの子、ヘーメラーの兄妹。ヒュギーヌス系ではヘーメラーとの間にガイア・ウーラノス・タラッサをもうけたとされる。
文化的足跡
「第五元素としてのアイテール」の観念は中世を通じて受け継がれ、19世紀の物理学は光の媒質として同じ名の「エーテル」を仮定した。マイケルソン・モーリーの実験(1887年)以降その存在は否定されたが、語は化学のエーテル類(有機化合物)になお残っている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。