グライアイ
グライアイ姉妹 · 灰色の三姉妹 · ポルキュデス
生まれつき白髪の三姉妹で、一つの目と一つの歯を分け合う。ペルセウスに目を奪われ、メドゥーサの在処を明かした。ゴルゴンたちの姉妹にあたる。
解説
概要
グライアイ(Γραῖαι、「老女たち」)は、ギリシア神話の三姉妹である。灰色姉妹、あるいはポルキュデス(「ポルキュースの娘たち」)とも呼ばれる。
生まれたときから白髪で、三人で一つの目と一つの歯を分け合った。原初の海の神ポルキュースとケートーの娘であり、ゴルゴンたちの姉妹にあたる。
名はデイノー、ペムプレードー、エニューオーである。エニューオーは戦の女神エニューオーとは別である。
神話・物語
最もよく知られるのは、ペルセウスとの遭遇である。
彼女たちは一つの目と一つの歯を、順番に使い回していた。ペルセウスは、それが手から手へ渡される瞬間を狙って目を奪う。返してほしければ教えよと迫り、メドゥーサを殺すために必要な三つの品——あるいはメドゥーサ自身——の在処を聞き出した。
姿については資料が食い違う。老いた白髪の女とされ、その齢はあまりに大きく、人としての幼年期を想像することさえ難しいという。ところがヘーシオドス『神統記』は、彼女たちを「頬美しき」と形容する。アイスキュロス『縛られたプロメーテウス』では「白鳥のごとき姿の古き乙女たち」(キュクノモルポイ)と呼ばれ、これは白髪を指すのかもしれない。
人数と名も一定しない。ヘーシオドスは二人だけを挙げ、「よく装えるペムプレードー」(「警戒」の意)と「サフラン色の衣のエニューオー」とする。アポロドーロスが第三のデイノー(「恐れ」、恐怖への戦慄すべき予感)を加えた。ヒュギーヌスは彼女たちを「ポルキデス」と呼び、ペムプレードーとエニューオーに加えてペルシスを挙げ、これを他はディーノーと呼ぶと注記する。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エドワード・バーン=ジョーンズ《ペルセウスとグライアイ》(1892年)である。
象徴の中心は、共有された目である。三人で一つの目を回し持つという設定は、ギリシア神話のなかでも際立って奇異な造形といえる。同時にこれは、物語の仕掛けとしてよくできている。目が手から手へ渡る瞬間——誰も見ていない一瞬——が必ず生じ、そこが唯一の隙になる。
名の語源は印欧祖語の語根 *ǵerh₂-(「老いる」)に遡る。ギリシア語のグラウス(γραῦς、老女)と同じ語根である。老いそのものが人格化されているという点で、アナンケーやクロノスと同じ系列に属する。
関わる神格・伝承
父はポルキュース、母はケートー。ゴルゴンたちの姉妹にあたる。エキドナ、ラードーン、スキュラらも、この夫婦の子として数えられることがある。
三姉妹という形はモイライやヘスペリデスと共通する。ただしグライアイの場合、三人であることが物語の仕掛けそのものになっている点が異なる。
文化的足跡
一つの目を回し持つ三姉妹という造形は、近代の映像作品でも繰り返し用いられてきた。ペルセウス神話を扱う映画やアニメーションにおいて、この場面はほぼ必ず登場する。
日本語圏では「灰色の三姉妹」の名でも紹介される。ペルセウスがメドゥーサの在処を知る手立てという、物語上は補助的な役どころでありながら、その奇異な設定によって記憶されてきた存在である。