カシュヤパ
カシュヤパ仙 · マリーチの子
サプタルシの一人に数えられる聖仙。ダクシャの娘たちを娶り、神々もアスラもナーガも鳥獣も、すべて彼から生じたとされる。
解説
概要
カシュヤパ(Kaśyapa / कश्यप)は、サプタルシ(七聖仙)の一人に数えられる聖仙である。ダクシャの多くの娘を娶り、神々(デーヴァ)、アスラ、ナーガ、鳥類、獣類——すなわち生けるものすべての父とされる。系譜の起点として、インド神話の多くの物語が彼に遡る。
神話・物語
マリーチの子、すなわちブラフマーの孫とされる。ダクシャの娘十三人(数は文献により異なる)を妻とし、それぞれから異なる種族が生まれた。アディティからはアーディティヤ神群、ディティからはダイティヤ、ダヌからはダーナヴァ、カドゥルーからは千のナーガ、ヴィナターからはガルダとアルナ、スラビーからは牛と水牛、ムニからはガンダルヴァとアプサラスが生じたという。神々と魔神が同じ父から生まれた異母兄弟であるという設定は、インド神話における対立の構図を規定している。
彼自身が主役となる物語は少ないが、系譜の分岐点として繰り返し名が挙がる。ヴァースキやタクシャカ、マナサーといったナーガ族、ヴィナターの子ガルダ、そしてアディティの子インドラやヴィシュヌの化身ヴァーマナに至るまで、その父もしくは祖父として現れる。日本語圏で流布するナンディンの系譜も、彼と牝牛スラビーの子とするものである。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。象徴となるのは系譜そのもので、この人物は個としてよりも、あらゆる種族が枝分かれしていく幹として記憶されている。
系譜と関係
父はマリーチ、祖父はブラフマー。妃はダクシャの娘たち。子孫に神々、アスラ、ナーガ、鳥獣のすべてが含まれる。ヴィシュヌの化身ヴァーマナは彼とアディティの子とされ、ラーマもまた彼の系統に連なるとする伝えがある。
文化的足跡
北斗七星の一つに配される。カシュヤパのゴートラは今日も広く見られる家系名である。カシミールの地名は彼の名に由来するとする伝承があり、湖であったこの地の水を彼が抜いて人の住める土地にしたと語られる。仏教では過去七仏の一人に迦葉仏の名が見え、また釈迦の弟子である摩訶迦葉も同じ名を負うが、いずれもヒンドゥーの聖仙とは別の存在である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。