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ヴァースキ
PLATE — वासुकि
BHARATA · ヒンドゥー神話
वासुकि

ヴァースキ

和修吉 · 婆素鶏 · ナーガラージャ

メトロポリタン美術館蔵『乳海攪拌』, Public domain PUBLIC DOMAIN

ナーガ族の王で、地下世界パーターラの支配者。乳海攪拌ではマンダラ山を回す綱となり、苦しさのあまり世界を焼く猛毒を吐いた。

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解説

概要

ヴァースキ(Vāsuki / वासुकि)は、ヒンドゥー神話におけるナーガ族の王(ナーガラージャ)である。地下世界パーターラを治め、都をボーガヴァティーに置く。頭上にナーガマニ(蛇の宝珠)を戴き、長大な体と、世界を滅ぼすほどの猛毒をもつ。シヴァが首に巻きつけて装身具とする蛇として図像に現れることでも知られる。漢訳では和修吉、婆素鶏と音写され、仏教では八大龍王の一尊に数えられた。

神話・物語

その長大な体は、しばしば「使われるもの」として物語に組み込まれる。最も名高いのが乳海攪拌である。神々とアスラが不死の霊薬アムリタを得ようとしたとき、彼はマンダラ山に自らの身を巻きつけることを許し、両者が引き合う攪拌の綱となった。ところが引かれる苦しさに耐えかね、猛毒ハーラーハラを吐き出してしまう。世界が焼き尽くされようとしたところをシヴァが毒を飲み込んで救ったが、喉を焼かれて首から上が青黒くなった。シヴァの別名ニーラカンタ(青い喉)はこれに由来するとされる。

大洪水の説話でも同じ役割を担う。人類の祖マヌの乗る舟が波に流されぬよう、ヴィシュヌの魚身化身マツヤの角と舳先を結ぶ綱となったと語られる。世界を支える綱として二度用いられ、そのつど自らは苦しむ側に置かれる。

マハーバーラタ』は、彼が母カドゥルーに呪われた経緯を伝える。カドゥルーは姉妹ヴィナターとの賭けに勝つため、神馬ウッチャイヒシュラヴァスの尾に子らを群がらせて黒く見せようと企てたが、ヴァースキはこれに与することを拒んだ。母は、いずれ蛇供祭の火に焼かれるであろうと子らを呪う。

その呪いがジャナメージャヤ蛇供祭として現実になろうとしたとき、彼は一族を救う道を探した。弟エーラパトラが、ブラフマーの言葉を立ち聞きしていたと告げる。妹ジャラトカールと、同じ名をもつ聖仙とのあいだに生まれる子が救い主となるであろう、と。ヴァースキは妹をその聖仙に嫁がせ、生まれた子アースティーカが祭を止めて蛇族を救った。母の呪いを、自らが縁組を整えることで解いた形である。

図像と象徴

とぐろを巻いた大蛇として表され、頭上のナーガマニが標となる。もっとも彼が最も多く描かれるのは単独像としてではなく、乳海攪拌の場面において神々とアスラに引かれる綱としてである。アンコール・ワット第三回廊東面の浮彫(12世紀)はその代表例であり、蛇の胴体が画面を横切って構図全体を規定している。メトロポリタン美術館が所蔵する乳海攪拌図も同じ主題を扱い、綱として引かれる彼の姿を中心に据える。

シヴァの首に巻きつく蛇として描かれる場合、それは苦行者としての主神の装身具であり、毒を制する力の証でもある。害をなす存在が守護の標へ転じる構図は、南アジアのナーガ信仰全般に通じる。

系譜と関係

父は聖仙カシュヤパ、母はカドゥルー。兄はヴィシュヌの臥床となる蛇王シェーシャ、妹はマナサー(ジャラトカール)で、タクシャカも兄弟にあたる。甥アースティーカは蛇供祭を止めた聖仙である。カドゥルーの姉妹ヴィナターの子ガルダとは、蛇と鳥という宿命的な対立の関係に置かれる。

文化的足跡

仏教に取り込まれ、難陀、跋難陀、娑伽羅、徳叉迦らとともに八大龍王の一尊、和修吉として数えられた。日本ではこの和修吉が九頭龍大神と結びつけられ、各地の九頭龍伝承の背景をなしているとされる。インドの毒蛇の王が、東アジアでは雨と水を司る龍として受け入れられた例である。

インドでは各地に彼を祀る社がある。ケーララのハリパード近くのマンナーラサーラは蛇神信仰の中心地として知られ、アーンドラ・プラデーシュのヴィシャーカパトナムにも社がある。カルナータカのククケ・スブラマニヤ寺院には、ガルダに襲われたヴァースキをスカンダが庇護したという地方伝承が伝わり、蛇と鳥の対立が第三者によって収められる形をとる。

2024年、グジャラート州カッチ地方の始新世中期の地層から見つかった全長10メートル以上と推定される巨大蛇の化石が、この蛇王にちなんで Vasuki indicus と記載された。神話上の名が、実在した最大級の蛇の学名として用いられた例である。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1635469 — 骨格データの出典
Commons
Vasuki — 図像カテゴリ