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ヴァルナ
PLATE — वरुण
BHARATA · ヒンドゥー神話
वरुण

ヴァルナ

水天 · ヴァルナ神 · Varuṇa

Los Angeles County Museum of Art(ラージャスターン・ブンディ派、1675〜1700年頃) PUBLIC DOMAIN

ヴェーダ最古層の主権神。宇宙の理法リタを守り、縄で罪人を縛る司法の神であったが、後代には水と西方を司る神へ領分を移した。仏教では十二天の水天となる。

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解説

概要

ヴァルナ(वरुण / Varuṇa)は、ヴェーダ最古層に現れるインドの主権神である。『リグ・ヴェーダ』ではミトラと対をなし、天空に座して宇宙の理法リタを守り、これに背く者を縄で縛る監視者として讃えられた。ヴェーダの神々のなかで、倫理的な性格をもっとも濃くもつ神である。ところが叙事詩・プラーナ期の文献では、その主権はブラフマー、次いでヴィシュヌやシヴァへ移り、ヴァルナは水を領分とする方位守護神の一柱へと退いた。同じ神が体系の内部で職を変えていく過程を、これほど明瞭にたどれる例は多くない。

神話・物語

『リグ・ヴェーダ』のヴァルナは「サムラージ(全支配者)」と呼ばれ、千の門をもつ黄金の座に住み、無数の斥候を放って人の行いを見張る。星々はその目とされた。罪はリタの破れであり、ヴァルナは罰する者であると同時に赦す者でもある。讃歌は自らの過ちだけでなく先祖の犯した過ちにまで赦しを乞い、病と恐れからの解放を願う。「千の薬をもつ」とも呼ばれ、医の神の性格も帯びた。

ヴァルナとミトラはしばしば「ミトラ=ヴァルナ」という双数形で一体に呼ばれ、両者ともにアスラと称される。ここでのアスラはまだ悪魔の意をもたず、マーヤーと呼ばれる不可思議な力を備えた主権者を指す。ブラーフマナ文献では、ミトラが昼と祭官を、ヴァルナが夜と王権を代表するという対比が整理された。

叙事詩期に入ると様相が変わる。『マハーバーラタ』のヴァルナは西方を守る方位神であり、海と河のあるじである。ナーガや河の女神たちに囲まれて水底の白い宮に住み、クル野の戦いに先立ってアルジュナに神弓ガーンディーヴァを与えたのもこの神とされる。『ラーマーヤナ』では、ランカーへ渡ろうとするラーマの苦行に応じ、海を分ければ自然の秩序が壊れると断ったうえで、橋を架けるよう助言し水を鎮めたと語られる。ただしこの場面の相手を、ヴァルナではなく海そのものの化身サムドラとする伝えもある。

図像と象徴

図像上のヴァルナを決定づけるのは、乗物と持物である。乗物はマカラ——ワニと魚を合わせた水獣で、南アジアにおける水の図像そのものである。手には縄(パーシャ)を執る。ヴェーダで罪人を縛った縄が、水神へ転じたのちも持物として残った点は注目に値する。ほかに水瓶、乳海攪拌の際に現れたという白い日傘、法螺貝のように白く澄んだ肌が説かれる。『マツヤ・プラーナ』は造像と祭祀の規定に多くを割き、宮殿の建立前の地鎮の儀礼や星宿を鎮める祭に、真珠・蓮華・クシャ草を供えてヴァルナを招くよう指示する。『ハヤシールシャ・パンチャラートラ』は白鳥に乗る二臂の姿とし、一方の手を施無畏に、他方に蛇の縄を持たせる。

方位神としては西を受け持つため、寺院建築では外壁の西面に配される。ヒンドゥー寺院を巡って方位神の列を読むとき、マカラと縄はヴァルナを見分ける確実な目印になる。

系譜と関係

女神アディティの子、すなわちアーディティヤ神群の一柱とされ、ミトラとは終始対をなす。天女ウルヴァシーを見た両神の精から聖仙ヴァシシュタアガスティヤが生まれたという説話は、『ラーマーヤナ』とプラーナに繰り返し語られる。妻の名はヴァールニー、ガウリー、ジエーシュターなど文献ごとに割れ、酒の女神スラーを娘とする伝えもある。

イランについては、『アヴェスター』でミスラと並んで現れる「アフラ」をヴァルナに対応させ、アフラ・マズダーと起源を同じくするとみる説が古くからある。ただしこれは比較神話学上の推定であって、史料に残る同一視ではない。ギリシアのウラノスとの語源的な同一視も、ドゥメジルが慎重に提起して以降、言語学的には支持を失っている。

文化的足跡

仏教はヴァルナから水神としての側面だけを受け継ぎ、西方を守る水天とした。密教の十二天の一尊であり、竜を支配して雨をもたらすとされ、雨乞いの修法に祀られる。大治二年(1127年)の十二天像のうちの水天像(京都国立博物館蔵)は国宝である。日本各地の水天宮も本来はこの水天を祭ったが、明治の神仏分離により祭神は天之御中主神へ改められた。ヴァルナがヴェーダで始源の主権神であったことと、この置き換えとのあいだに教義上の連続はない。

現代の創作作品にも水を司る神格として登場するが、その多くは後代のヴァルナ像に基づくものであり、天則を守り罪を裁くというヴェーダの相はほとんど反映されていない。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q1001037 — 骨格データの出典
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Varuna — 図像カテゴリ