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エンキ
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SVMER · メソポタミア神話
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エンキ

エア · Enki · Ea

The British Museum(アッダの印章 BM 89115) PUBLIC DOMAIN

エリドゥを本拠とするメソポタミアの知恵と淡水の神。地下水アプスーを支配し、力ではなく策略で難題を解く。アッカド語ではエアと呼ばれ、粘土から人を造った神とされる。

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解説

概要

エンキ(シュメール語 dEN.KI、アッカド語ではエア Ea)は、知恵と呪術、工芸、そして地下を満たす淡水を司るメソポタミアの神である。本拠はメソポタミア最古の都市とされるエリドゥで、その神殿はエ・アブズー(アプスーの家)と呼ばれた。支配するアプスーは地下の淡水の深淵であり、地上の泉や河はそこから湧くと考えられた。

エンキとエアはもともと別の神であり、前3千年紀後半のバビロニアの一部では既に習合していたとみられる。エアという名の由来は不明だが、セム語系である可能性が指摘されている。ウル第三王朝期から古バビロニア期にかけて、アヌ・エンリルとともに神々の頂点をなす三柱の一柱に数えられた。

神話・物語

エンキは力で勝つ神ではなく、知恵で局面を動かす神である。『エンキとニンマフ』では、神々の労役を肩代わりさせるために新しい存在を造る策を立てる。『アトラ・ハシース』では女神ベーレト・イリと組んで粘土と神の血から人を造り、のちにエンリルが洪水神話の大洪水で人類を滅ぼそうとしたときには、葦の壁越しに独りごとを言うという抜け道で庇護者アトラ・ハシースに警告し、種を残させる。神々の決議に背かず、しかし結果を覆すという振る舞いがこの神の型である。

『イナンナとエンキ』では、訪れたイナンナと酒を酌み交わすうちに、文明の諸要素を定める神権メを次々と与えてしまい、酔いが醒めてから使者を送るが取り返せない。『イナンナの冥界下り』では、他の神々が断るなかただ一人動き、爪の垢から性をもたぬ二体を造って冥界へ送り、女神を甦らせる。

アダパの神話では、天に召された人間に「差し出される食物は死の食物だ」と教える。ところがアヌが用意したのは不死の食物であり、忠告に従ったアダパは永遠の生を取り逃がす。助言する神が、その助言によって人間から不死を奪う——という皮肉な筋である。

図像と象徴

エンキの図像は明快である。両肩から二条の水流が湧き出し、そのなかを魚が泳ぎ上る。これが前3千年紀のアッカド期以来の定型となった。主画像に掲げた大英博物館蔵「アッダの印章」(前2300年頃)の一場面がその代表で、有角冠をかぶり、片足を山に掛けた神の肩から水が噴き出している。水を満たした壺を抱え、そこから水があふれる姿も繰り返し表された。

角のある冠をかぶった髭の神が、胸の前で器を両手に抱える素焼きの小像
水のあふれる器を抱く有角冠の神の焼成粘土像(古バビロニア期、ペルガモン博物館)。エアと解されているOsama Shukir Muhammed Amin FRCP(Glasg) / CC BY-SA 4.0 — Wikimedia Commons

象徴としては、山羊の頭と魚の尾をもつ合成獣スフルマーシュ(山羊魚)、牡羊の頭を戴く杖、そして亀が挙げられる。山羊魚はのちに黄道十二宮の磨羯宮(山羊座)へ受け継がれた。従者は前後に二つの顔をもつイシムドで、同時に両方向を見るその姿は、この神の知恵の性格に重ねて読まれてきた。円筒印章では、イシムドに導かれて玉座のエンキに拝謁する場面がしばしば刻まれる。

左に石の円筒印章、右にその印影があり、印影には座る神の前に数人の人物が列をなす場面が浮き出ている
二つの顔をもつ従者イシムドに導かれ、玉座のエンキに拝謁する礼拝者(アッカド期の円筒印章と印影、ルーヴル美術館)Zunkir / CC BY-SA 4.0 — Wikimedia Commons

系譜と関係

父はアヌ、母は原初の水の女神ナンムとされ(ウラシュとアヌの子とする讃歌もある)、エンリルとは兄弟にあたる。妻はダムガルヌンナ、子にはマルドゥク、ナンシェ、アサルルヒらがある。従者に七賢人(アプカル)を従え、彼らを通じて人間に文明の技術を伝えたとされる。ラフム、クルッルーといった水に属する半人半魚の従者もこの神に属する。

黒っぽい玄武岩の水盤の側面に、壺を胸に抱えた神とその両側で魚の頭と皮を背にまとった人物が浮彫で並んでいる
水の流れ出る壺を持つ神と、魚の皮をまとった人物たち(アッシュル出土の玄武岩製水盤、前7世紀、ペルガモン博物館)。中央の神はエア、両脇はアプカルと解されることが多いOsama Shukir Muhammed Amin FRCP(Glasg) / CC BY-SA 4.0 — Wikimedia Commons

シュメール語のエンキとアッカド語のエアは、遅くとも前3千年紀後半には同一視されていた。両者の名の意味はいずれも確定していない。エンキを「大地の主」と訳す通説には、この神の職掌と合わないという批判があり、別の語源も提案されている。

文化的足跡

エンキ/エアの信仰はメソポタミアを越えて広まり、フルリの宗教に取り込まれ、ヒッタイトの神々の一員となった。フルリの『クマルビ神話』では、ここでも難題を解き王を立てる役を担う。

バビロンの隆盛とともに実権は子マルドゥクに移るが、『エヌマ・エリシュ』はマルドゥクの勝利をエアの知恵の延長として語り、父の役割を消していない。近代以降は、粘土から人を造る神、洪水を予告する神という二つの主題が、旧約聖書の記述との比較で繰り返し論じられてきた。現代の創作でも、力ではなく知恵で立ち回る神という性格がそのまま引き継がれることが多い。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
コシャル・ハシス フェニキア・カナン神話 同一視
ウガリットの多言語の神名表がコシャルをエア(エンキ)に対応させる

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。

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資料

Wikidata
Q189726 — 骨格データの出典
Commons
Enki — 図像カテゴリ