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アダド
PLATE — 𒀭𒅎
SVMER · メソポタミア神話
𒀭𒅎

アダド

イシュクル · Iškur · Ishkur

Rama CC BY-SA 2.0 FR

メソポタミアの天候神。シュメール語ではイシュクルと呼ばれた。時を得た雨と国を潰す嵐という二面をもち、太陽神シャマシュと並んで占いを司る神とされた。

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解説

概要

アダド(アッカド語 Adad、表語文字 𒀭𒅎 dIM)は、メソポタミアの天候神である。名の起源は西セム語圏にあり、前2500年頃のエブラに「ハッダ」として現れる。アムル人の移動とともにメソポタミアへ入り、バビロン第一王朝以降に広く祀られるようになった。アッカド語では「雷鳴を轟かす者」を意味するラムマーヌの名でも呼ばれる。

同じ表語文字 dIM は、南部シュメールの天候神イシュクルにも当てられた。ただしシュメールでの位置は高くない。雨に乏しく灌漑に頼る土地では嵐の神の出番が限られ、エンリルニヌルタが嵐の属性を分け持っていたためである。イシュクルはしばしば、より有力な神の従者や道連れとして現れる。逆に降雨に依存する北部のアッシリアでは、アダドは早くから重んじられた。ティグラト・ピレセル1世(前1115〜前1077年)以降、アッシュル市にはアヌと共有する二重の神殿が置かれ、両神は祈願文でしばしば並べて呼ばれる。

賛歌や奉献文が描くアダドは、はっきりと二つの顔をもつ。時を得た雨で土地を潤す恵みの神であり、同時に嵐を送って国を潰す神である。ある文書はイシュクルの二面を、荒れ狂う怒りと命を与える慈しみとして言い表した。

神話・物語

洪水神話でアダドが担うのは、破壊の側の役どころである。アトラ・ハシース叙事詩では、増えすぎた人間を減らすためエンリルが旱魃を命じると、アダドは雨を止め泉を涸らす。人々が供物と祈りをもって彼に取り入ったとき、彼は機嫌を直して雨を降らせた。しかし神々が最後に大洪水を決したときには容赦がなく、その雷鳴が雲のなかで轟いたと語られる。

『アンズー神話』では、運命の書板を奪った怪鳥アンズーの討伐に、ギッラ、シャラとともに彼が差し向けられる。三神はいずれも果たせず、役目はエンキの推挙でニヌルタに移った。天候の神が最強の武力ではないという、この体系の序列がうかがえる場面である。

もう一つ重要なのは占いにおける役割である。アダドは太陽神シャマシュと組んで「占いの主」と呼ばれ、犠牲獣の肝臓を読む儀式、水に垂らした油の動き、天体の運行の観察といった、神意を問うあらゆる場面で二神ともに呼びかけられた。

図像と象徴

アダドの徴は牡牛と稲妻である。前2千年紀初頭以降、牡牛は一貫して彼の聖獣とされ、神は牡牛の背に立つ姿で表された。手には三叉に分かれた稲妻の束を握り、しばしば棍棒か斧を添える。頭には角冠を戴く。ルーヴルが所蔵するアルスラン・タシュ出土の玄武岩の石碑(ティグラト・ピレセル3世期、前744〜前727年)は、牡牛の上に立ち両手に雷束を掲げるこの神の姿を最もよく伝える作例である。イラク南部から出た前18〜16世紀のテラコッタ飾板にも、同じ構図がすでに現れている。

円筒印章では、角冠の神が牡牛を引き、あるいはその背に立ち、稲妻を振り上げる図がくり返される。クドゥルでは三叉の稲妻だけが彼の標章として刻まれることが多い。バビロンのイシュタル門の壁面を飾る牡牛の列も、この神に結び付けて理解されている。シャマシュと組む文脈では、彼の暗い相貌が日輪の明るさと対をなす構図が採られた。

系譜と関係

親についての伝承は一定しない。天空神アヌの子とする系譜が最も広く、ある連禱は彼を「大いなる輝く牡牛、汝の名は天」と讃えてアヌの子、カルカラの主と呼ぶ。エンリルとニンリルの子とする伝えもあり、また月神シンとニンガルの子としてシャマシュイナンナの兄弟に置く文書もある。妻は穀物の女神シャラで、その名で対をなす記録は古バビロニア期から一貫している。火の神ギッラを二神の子とする伝えもある。祭祀の中心は南部のカルカラ、北部ではアレッポ、マリ、ザッバンであった。

西方では同じ神がハダドの名で呼ばれ、ウガリトでは「主」を意味するバアルの称号のもとに語られた。アナトリアではフルリの天候神テシュブが同じ dIM で表記され、ミタンニの文書もこれに従っている。

文化的足跡

アッシリアの王名には、アダド・ニラリ、シャムシ・アダド、アダド・アプラ・イッディナのように彼の名がしばしば組み込まれた。ヘレニズム期以降、西方のハダドはインテルプレタティオ・グラエカによってゼウスと重ねられ、ローマ帝政期にはユピテル・ドリケヌスの名で軍団兵に広く信奉されている。恵みと破壊を併せもつ天候神という像は、雷神の比較のうえで基準となる例の一つである。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ハダド フェニキア・カナン神話 同一視
古代の文書において東西の天候神は同一の神として扱われた。前2500年頃のエブラの「ハッダ」がメソポタミアで Adad の名を得る経緯が知られる。
テシュブ メソポタミア神話 同一視
神名表はフルリの天候神テシュブをメソポタミアのアダドの対応神として記す。同じ表語文字 dIM で表記されたことがこの対応を支えた。
ハダド フェニキア・カナン神話 同源
アッカド語 Adad と西セム語 Haddu/Hadad は同一の語に遡る。いずれも表語文字 dIM で記され、アムル人の移動を介して東西に分岐した形である。

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資料

Wikidata
Q346547 — 骨格データの出典
Commons
Adad — 図像カテゴリ