ラフム
ラハム · ラフムとラハム · Laḫmu
「毛深い者」を意味する厄除けの存在で、六つの巻毛を持つ裸の髭の男として表される。エンキ/エアの従者で神殿の門番、海の守護者とされた。『エヌマ・エリシュ』ではアプスーとティアマトの最初の子。
解説
概要
ラフム(Laḫmu)は、メソポタミア神話の守護霊の一類である。名はセム語で「毛深い者」を意味するが、サルゴン以前のシュメールの資料にすでに現れる。神であることを示す限定符が名に付くことはまれで、神々に仕え、悪霊を退ける存在として扱われた。一方、天地創造の物語『エヌマ・エリシュ』では、同じ名が原初の神の名として現れる。
神話・物語
ラフムは水と結びつき、エンキ/エア、のちにはその子マルドゥクの従者とされた。エリドゥにあるエンキの神殿の門番を務め、『アトラ・ハシース』のいくつかの版では「海の守り手」として現れる。この役に五十のラフムを数える文書もある。もとは家畜や野の獣を世話する川の精霊であったとみる説がある。家を悪霊から守る存在であり、神話では、いったん神々に敵対して敗れたのち従う側に回った者として語られることもある。
『エヌマ・エリシュ』では、ラフムとラハムはアプスーとティアマトの最初の子で、アンシャルとキシャルの親にあたる。この系統はアヌ、エア、マルドゥクへと続く。マルドゥクがティアマトを倒したのち、ラフムとラハムはそれぞれ三つずつマルドゥクに名を贈る。他方、ティアマトが神々との戦いのために生み出した怪物たちの列にも「ラフム」の名が見え、こちらは守護霊の類とみられる。マルドゥクの代わりにアッシュルを主人公とするアッシリアの改作では、ラフムとラハムがエアとダムキナの位置に置かれている。
図像と象徴
ラフムは、髭をたくわえ、頭の両側に三対、合わせて六つの巻毛を垂らした裸の男として表される。文書には赤い衣や鋤を持物として挙げるものもある。美術史で「裸の英雄」と呼ばれてきた像の多くは、この存在にあたると考えられている。
アッカド王朝の王シャル・カリ・シャッリの書記イブニ・シャッルムの円筒印章(ルーヴル美術館蔵)では、二人の裸の英雄が水の流れ出る壺を抱え、その水を水牛に飲ませている。水と獣の世話をする精霊という性格が、そのまま図像になっている。
新アッシリア時代には、ラフムの小像が厄除けとして建物の床下に箱に収めて埋められた。本サイトの主画像は、ニネヴェから出土したそうした粘土の小像の一つ(前9〜7世紀、大英博物館蔵)である。
系譜と関係
女性形はラハム。『エヌマ・エリシュ』ではアプスーとティアマトの子、アンシャルとキシャルの親。別の神統譜(アヌの系譜)では、親をダリとドゥリ、子をアラーラとベリリとする。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。