ゲシュティンアンナ
ゲシュティンアンナ · 天の葡萄の木 · Geshtinanna
ドゥムジの姉妹で「天の葡萄の木」を意味する女神。ドゥムジの夢を解き、拷問に屈せず居場所を明かさなかった。彼の身代わりを願い出て、半年ずつ交替で冥界に留まることになった。書記術と夢の解釈の女神。
解説
概要
ゲシュティンアンナ(Geshtinanna)は、メソポタミアの女神で、兄弟ドゥムジの死をめぐる神話における役割によって最もよく知られる。
メソポタミアの万神殿においてどのような職能を果たしたかは確かでないが、書記術と夢の解釈との結びつきはよく確認される。冥界で書記を務めることができ、神話『イナンナの冥界下り』によれば、ドゥムジの代わりに一年の半分を冥界で過ごさねばならなかった。
神話・物語
ドゥムジは、自分の死を告げる夢を見た。姉妹のゲシュティンアンナはこれを解き、冥界の使いガッラーが彼を捕らえに来ると告げた。ドゥムジは逃げ、居場所を明かさないよう彼女に頼んだ。ガッラーはゲシュティンアンナを捕らえ、責め苦を与えてドゥムジの居場所を吐かせようとしたが、彼女は屈しなかった。しかしドゥムジの友が金と引き換えに居場所を教えてしまい、ドゥムジは捕らえられた。
女神イナンナが冥界から戻るには、かわりの者を差し出さなければならなかった。イナンナは、自分の死を嘆かなかった夫ドゥムジを選んだ。ドゥムジが冥界へ連れて行かれると、ゲシュティンアンナは彼の身代わりになると申し出た。イナンナは、二人が半年ずつ交替で冥界にとどまるよう定めた。ドゥムジが地上にいる半年が実りの季節、冥界にいる半年が乾いた季節であり、季節の巡りが、この交替によって説明されているのである。
名と職能
名は「天の葡萄の木」を意味する。葡萄と結びつく女神であり、ドゥムジが羊飼いであることと対をなす。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ゲシュティンアンナの名を刻んだ大理石の鉢の断片である(シュメール、ウルク出土、大英博物館蔵)。
兄弟のために身代わりになる姉妹という位置が、この女神を規定する。拷問に屈せず居場所を明かさず、最後には自ら冥界へ下る。イナンナが夫を犠牲にするのと対照的である。
関わる神格・伝承
ドゥムジとは姉妹と兄弟の間柄にあたる。長幼は原典からは決めがたく、本サイトでは姉とも妹とも定めずに記す。母はドゥットゥルで、父をエンキとする説もあり、『シュルギ讃歌P』はウラシュとアヌの娘とする。イナンナに関わる。
祭祀は主として初期王朝期のラガシュ国家から知られ、そこでは固有の祭祀中心サグブを持っていた。古バビロニア期以後は崇拝されなくなったが、神々のリストと文学作品にはその後も言及された。
文化的足跡
ドゥムジとゲシュティンアンナの交替は、ペルセポネーの半年の往復と比較されてきた。ただしメソポタミアでは、交替するのが姉妹と兄弟である点が異なる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。