ナンシェ
ナンシェ · ナジェ · Nanshe
ラガシュの女神で、社会正義・予言・漁・水鳥を司る。孤児と寡婦を守り、枡目や境界の不正を裁いた。グデア王の夢を解いてニンギルスの神殿建設を導いた。魚と水鳥を象徴とする湿地の女神。
解説
概要
ナンシェ(Nanshe)は、メソポタミアの女神で、ラガシュ国家の万神殿において重要な位置を占めた。エンキの娘とされる。
社会正義、予言、漁、水鳥と結びつけられた。夢の解釈の女神としても知られる。
職能
社会正義。 『ナンシェ讃歌』は、この女神が孤児と寡婦を守り、弱者の訴えを聞き、不正を糺すと歌う。「彼女は孤児を知り、寡婦を知り、人が人を虐げることを知り、孤児の母である」。年の初めにナンシェは人々の行いを裁いたとされる。
秤と升を正しく用いること、境界を侵さないこと、貧者から奪わないこと——ナンシェの前で問われるのは、日常の公正である。メソポタミアの神々のうち、社会正義をこれほど明確に職能とする例は少ない。
夢の解釈。 ニンギルスの神殿建設に際して、グデア王が見た夢を解いたのはナンシェである。ナンシェの祭司は夢占いを担った。
漁と水鳥。 ラガシュのニナ(シラーラ)が祭祀の中心で、湿地帯に位置した。魚と水鳥の目録が、この女神に捧げられた文書に現れる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ナンシェとされる女神の立像である。魚を伴う。
魚が、この女神の象徴である。水鳥、とりわけ鵜も伴う。湿地の女神として、ラガシュの環境に根ざした信仰であった。
社会正義の神という職能は、メソポタミアの都市国家の法観念と結びつく。シャマシュが法の神であるのに対し、ナンシェはより日常的な公正——枡目、境界、弱者の保護——を担う。
関わる神格・伝承
父はエンキ、姉妹はニンギルス(兄)とされることもある。夫はニンダラ。娘はニンマル。
祭祀は主としてラガシュ国家に限られ、他の都市への広がりは乏しい。
文化的足跡
『ナンシェ讃歌』は、シュメール文学における社会正義の観念を伝える最も重要な資料として、繰り返し研究されている。