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クヌム
PLATE — H̱NMW
AEGYPTVS · エジプト神話
H̱NMW

クヌム

フヌム · クネム · クヌーム

The Metropolitan Museum of Art (30.8.256), CC0 CC0

エジプト最古級の神の一柱。羊の頭をもち、ナイル第一急湍で増水の水量を按配する。轆轤の上で粘土から人の身体と生命力カーを捻り出す創造神として知られる。

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解説

概要

クヌム(ẖnmw / Khnum)は、エジプト神話で最も古い層に属する神の一柱である。渦を巻く角をもつ羊の頭で表され、ナイル第一急湍にあって増水の水量を按配する。そして轆轤の上で粘土を捻り、人の身体と生命力カーを作り出す創造神とされた。

名に含まれる記号 ẖnm は「井戸」「泉」を意味する語に由来するとみられるが、羊を指すセム語系の語根と結びつける説、「愛される神なる者」と読む説もあって定まらない。第1王朝から祭祀が確認され、ギリシア・ローマ期まで途切れなかった。当初の中心は中エジプトのヘルウェルで、エレファンティネ島では新王国期に島の主神へ昇る。エスナも大きな拠点であった。大ピラミッドを築いたクフ王の本名クヌム・クフウィは「クヌムは我が守護者」を意味する。

神話・物語

クヌムの第一の職掌は、水量の調節である。増水はハピの洞窟から湧き出すとされ、その洞窟の口をこの神が開閉すると考えられた。豊作と飢饉のあいだに立つ神であって、この位置が飢饉碑文の物語を生む。ジェセル王の治世に七年の飢饉が続き、イムホテプが古文書を調べて増水を握る神を突き止め、神殿で見た夢のなかでクヌムが水を再び流すと約束する——という筋である。ただしこの碑はプトレマイオス朝の制作で、クヌム神官団が自らの取り分を古い勅令の形で書き起こしたものと見られている。

第二の職掌が創造である。轆轤の上で粘土を捻り、人の身体を、そのカーとともに作り、母の胎内に置く。神々を、そして動物界そのものを捻り出したとも語られた。『ウェストカー・パピルス』の末尾では、第5王朝最初の三王が生まれる場に女神たちが産婆として立ち会い、クヌムが生まれた子らの身体に健康を与える。

エスナの神殿には「轆轤据えの祭」があった。子を望む女たちだけが参加し、男の神官は入れない。夜遅く、女たちは轆轤を捧げ、隠された神像の前で唱えごとをする。パレムハト月の第1日に行われ、饗宴で終わったと記録される。エジプトの祭礼のうち、参加者が性別で限られたことのはっきりわかる数少ない例である。

図像と象徴

羊の頭をもつ人の姿が基本である。ただし角の形が時代で入れ替わる。古い図像では角が水平に螺旋を描く。これは古代エジプトにいた螺旋角の羊にもとづくもので、この亜種は中王国期までに絶滅した。新王国期以降は、下向きに巻くアメン型の角に描き替えられる。角の巻き方が、そのまま制作年代の指標になるのである。夜のラーが雄羊の頭で表されるのも、この古い羊の記憶に連なる。

頭上にはアテフ冠、あるいは上エジプトの白冠を戴く。ナイルの支配者としての相ではワニの頭で描かれることもあった。轆轤の前に坐し、円板の上に小さな人の像が立つ図は、この神の職掌をそのまま絵にしたもので、ルクソール神殿やデンデラのマンミシ(誕生殿)に見られる。

エレファンティネ島からは、金の頭飾りをつけて石棺に納められた羊のミイラが出土している。神の姿を写した像だけでなく、その動物そのものが葬られた(動物ミイラ)。

本サイトが主画像に掲げるのは、メトロポリタン美術館蔵の羊頭のクヌム像である。

系譜と関係

配偶神が場所ごとに違う。エレファンティネではサテトを妻、アヌケトを娘としてエレファンティネ三柱神をなす。エスナではメンヒトとネブトゥウを妻とし、ネイトや魔力の神ヘカと並んで祀られた。ヘカは長子にして後継者とされる。かつての配偶神は蛙の女神ヘケトで、のちサテトがその位置に入った。

エスナの神学では、クヌムを「父たちの父」、ネイトを「母たちの母」と呼び、この二柱からラーが生まれるとする。クヌム・ラーの名はこの結合を指す。下エジプトで同じ位置を占めたのは羊神バネブジェデトである。

文化的足跡

エレファンティネのクヌム神殿は中王国期にさかのぼり、新王国期にハトシェプストとトトメス3世が拡張した。今日そこに残る主要な遺構は、大きな門である。この神殿の拡張をめぐって、島に住んでいたユダヤ人共同体との軋轢が生じたことが、前5世紀のアラム語文書から知られている。

エスナの神殿はプトレマイオス朝に着工し、現存部分の多くはローマ期の造営である。ローマ皇帝が神々に供物を捧げる場面が壁を埋め、そこに刻まれたヒエログリフの装飾は、この文字体系による神殿装飾の最後の到達点となった。

粘土から人を捏ねる神は各地にいる。メソポタミアで女神が粘土から人を作り、ギリシアではプロメーテウスが、中国では女媧が同じことをする。だが、これは陶工の技術を知る社会が繰り返し思いついた比喩であって、伝承の系統が繋がっている証拠ではない。クヌムに固有なのは、身体だけでなくカーを同時に作るという点にある。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

Naunet
H̱NMW
クヌム
エジプト神話
Nebtuwi
配偶者
メンヒト
配偶者
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資料

Wikidata
Q183097 — 骨格データの出典
Commons
Khnum — 図像カテゴリ