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ハピ
PLATE — ḤꜤPJ
AEGYPTVS · エジプト神話
ḤꜤPJ

ハピ

ハピィ · ハアピ · ハーピ

Walters Art Museum (54.2135) PUBLIC DOMAIN

ナイルの増水を神格化した神。垂れた乳房と太鼓腹をもつ姿で表され、王座の側面に二体一組で「二国の結合」を刻む図像で知られる。神殿をほとんど持たない神である。

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解説

概要

ハピ(ḥꜥpj / Hapi)は、ナイルの増水を神格化したエジプト神話の神である。川そのものというより、毎年やってくる水位の上昇と、それが残す肥沃な泥を担う。

垂れた乳房と太鼓腹をもつ男性の姿で表される。豊かさそのものを身体で示すためであり、性別を一方に定めない造形が意識して選ばれている。

同名の神格が複数あるため注意がいる。ホルスの四人の子の一柱ハピ(ヒヒの頭で、肺を納めるカノプス壺を守る)は別神である。また聖牛アピスのエジプト語名もハピ(ḥp)と読まれるが、これも語が異なる。

神話・物語

増水はエレファンティネの急湍にある洞窟から湧き出すとされ、その水量を按配するのがクヌムであった。ハピはそこから流れ出す水そのものである。

系譜も物語も乏しい。この神について語られるのは、もっぱら「来るか、来ないか」である。増水が足りなければ飢饉、多すぎれば村が流される。中王国期の「ハピへの讃歌」は、この神を耕地を養う者として讃えながら、その加減が人の手の及ばぬところにあることを繰り返し述べる。神殿はほとんど建てられず、供物は川そのものに投じられた。祀る場所を持たない神である。

図像と象徴

青あるいは緑に塗られた肌、太鼓腹、垂れた乳房、そして王と同じ付け髭。頭には下エジプトを示すパピルス、あるいは上エジプトを示す蓮を載せる。手には供物台や水壺を捧げ持つ。

最もよく知られるのは、二体一組の構図である。王座の側面に上下エジプトのハピが向かい合い、パピルスと蓮の茎を気管と肺をかたどった記号に結びつける。「セマ・タウィ(二国の結合)」と呼ばれるこの図像は、王権が二つの土地を束ねることを、川の恵みの結合として表したものである。玉座という最も政治的な場所に、増水の神が二人がかりで彫られている。

本サイトが主画像に掲げるのは、ウォルターズ美術館蔵の板飾り(末期王朝、前680〜650年頃)で、供物台を抱えたハピが刻まれている。

系譜と関係

配偶神は地方によって異なり、下エジプトではウアジェト、上エジプトではネクベトを当てる例がある。父も母も定められていない。

同じ水系の神々のなかで、ハピは水量そのもの、クヌムはその調節、サテトは注ぐ行為、アヌケトは到来の告知を担う。一つの自然現象を複数の神で分担する、エジプト神学に典型的な配置である。

文化的足跡

増水の水位は各地のナイロメーターで測られ、その数値が税額の算定に直結した。神への信心と国家の会計が同じ目盛りの上にあったことになる。

ローマ期には、ハピの図像がギリシア・ローマ風の河神像に翻訳された。ヴァチカン美術館の「ナイル」像は、横たわる老人の身体に十六人の子どもがまとわりつく姿で、この十六が理想の増水の高さ(十六キュビト)を表す。

1970年、アスワン・ハイ・ダムの完成によって毎年の氾濫は止まった。五千年にわたってエジプトの暦と税と神学を規定してきた周期が、この神とともに終わっている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q32143 — 骨格データの出典
Commons
Hapy — 図像カテゴリ