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ヌン
PLATE — NNW
AEGYPTVS · エジプト神話
NNW

ヌン

ヌゥ · ヌー · ナウネト

『アニのパピルス』と新王国期の墓壁画に基づく描画/Jeff Dahl, CC BY-SA 4.0 CC BY-SA 4.0

創造以前の原初の水を人格化したエジプトの神。ヘルモポリス八柱神の一柱で、すべての神に先立ち、いつか万物を呑み込んで元へ返す。捧げられた祭祀は存在しない。

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解説

概要

ヌン(nnw、ヌゥとも)は、エジプト神話で創造以前の原初の水を人格化した神である。名は「動かぬもの」「水なるもの」と解される。太陽神ラーは、この水の底から立ち上がった。

ヘルモポリスの八柱神の一柱に数えられ、世界が生じる以前の混沌を担う。すべての神に先立つ最初の存在であり、同時に、いつか存在するものすべてを再び呑み込んで元へ返す神でもある。この神に捧げられた祭祀は存在しない。

女性形の対はナウネト(ヌヌト)。ヌンの名に女性語尾を付した形である。

神話・物語

名そのものが言葉遊びに用いられた。ある文書は「われは彼らを水の塊(ヌゥ)から、無為(ネン)から引き上げた」と記す。同じ音を並べて、原初の水と不活性を重ねているのである。コプト語で「深淵」を意味する語との関係も指摘されている。

エジプト人が思い描いた宇宙は、ヌンの大洋のなかに浮かぶ一つの泡であった。その泡の内側にだけ生の領域があり、外側はどこまでも水である。創造とは、この水から最初の丘が現れることを指す。ヘリオポリスの神学では、アトゥムが水のなかに何も為さぬ可能性として存在し、そこから自らを生んだ。

丘の上で何が起きたかについては、いくつもの版がある。ベンベンと呼ばれるピラミッド形の丘が原初の混沌のなかから現れ、そこに咲いた蓮の花が開いてネフェルトゥムの相をとる太陽が現れたともいう。太陽が丘から直に現れたとも、蓮から現れたとも、鷺(ベンヌ)、隼、甲虫(ケプリ)、あるいは人の子の姿をとったとも語られた。牝牛メヘト・ウェレトが水から太陽を産んだとする版もある。どれか一つが正しいのではなく、複数の説明が矛盾したまま併存する——エジプトの創世神話の性格が、この神をめぐる記述に最もよく現れている。

中王国以降、ヌンは「神々の父」と呼ばれ、以後の宗教史を通じて神殿の壁に描かれ続けた。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、『アニのパピルス』と新王国期の墓の壁画に基づいて描かれた線図である。両腕を高く掲げて太陽の舟を支える大きな人物の姿で、原初の水そのものを表す。

図像の型は三つある。人の姿で刻み目のある棕櫚の枝を持つ形。蛙、あるいは蛙の頭を持つ人の形——ヘフケクと共有する、八柱神の男性形に固有の造形である。そして日輪や太陽の舟を頭上に差し上げる形。昇る太陽をヒヒの姿で迎える例もある。

八柱神の他の神と同じく、神殿も祭祀の中心地も持たない。それでもこの神が不在だったわけではなく、聖池がその存在を表した。カルナクとデンデラの神域にある池、アビュドスの地下水脈がそれにあたる。神像を拝む代わりに、水そのものが置かれている。

系譜と関係

対をなすのはナウネト。八柱神の残りはアメンとアマウネト、ヘフとハウヘト、ケクとカウケトである。

ヘリオポリスの九柱神の体系においては、創造の一点でアトゥムと並んで超越的な位置に置かれる。九柱神が系譜として下へ伸びていくのに対し、ヌンはその外側にとどまり続ける。原初の丘を体現するタチェネンが「現れた土地」であるなら、この神は「現れる前」そのものである。

文化的足跡

日本語圏では、エジプトの創世といえばアトゥムやラーの名が挙げられ、その足元にある水はあまり語られない。

しかしエジプトの宇宙論において、この水は消えてなくならない。世界の外側に、そして地下に、常に在り続ける。ナイルの氾濫も、聖池の水も、死者が渡る水も、すべてヌンの一部と理解された。創造は完了した出来事ではなく、混沌に囲まれた泡を維持し続けることである——エジプトの祭祀が日々繰り返された理由の一端が、ここにある。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

収載データなし
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ヌン
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資料

Wikidata
Q276563 — 骨格データの出典
Commons
Nun (god) — 図像カテゴリ