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ネイト
PLATE — NT
AEGYPTVS · エジプト神話
NT

ネイト

ネト · ニト · Neith

ネイト立像(末期王朝期・金象嵌青銅/ルーヴル美術館エジプト部門 E 3730) CC0

エジプト最古級の女神。ナイル・デルタのサイスを本拠とし、交差した弓を標識とする戦いの女神であると同時に、機を織る創造神でもあった。

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解説

概要

ネイト(Neith)は、古代エジプトの女神。ナイル・デルタ西部の都市サイス(古代名ザウ)を本拠とし、考古学的にはナカダ二期(前3600〜前3350年頃)まで遡る、エジプトでも最古級の神格である。盾の上に二張りの弓を交差させた標識で表され、戦いと狩りの女神とされる一方、原初の水から最初の陸地を生み出した創造神でもあった。さらに機織りと、その延長にあるミイラの包帯を通じて葬送にも関わる。戦い、創造、機織り、葬送——一見ばらばらなこれらの職能が一柱に収まっているところに、この女神の古さが表れている。

神話・物語

サイスのネイト神殿は「矢を射る者」「道を開く者」への戦勝祈願の場であった。「道を開く者」の称号は狼の神ウプウアウトとも共通し、戦場で道を切り開くことと、死者を来世へ導くことの双方を指すとみられる。

創造神としての姿は、上エジプトのエスナにある神殿の壁に記録されている。ネイトは原初の水ヌンから最初の陸地を生み出し、思考によって三十柱の神々を含む世界を存在させた。夫を持たずに生んだとされ、新王国時代以降は「万物の母にして父」と呼ばれる。機を織る女神として、日ごとに世界を織り直しているとも語られた。

母としての側面は広い。太陽神ラーの母とされ、同時にラーの敵である大蛇アペプの母ともされる。ワニの神セベクの母とする伝えもあり、二匹の仔ワニに乳を与える姿で表されることから「ワニの乳母」の異名を持つ。

ホルスセトが王位を争ったとき、神々は裁定をネイトに求めた。ネイトはホルスが王位を継ぐべきだと答えたと伝えられる。古い女神の権威が、後発の神々の紛争を裁いている。ヘロドトスはまた、サイスで毎年「灯明の祭」が催され、夜通し多くの灯りが屋外に灯されたと記した。

図像と象徴

標識は、盾の上に交差した二張りの弓である。この記号はサイスの町そのものを表す紋章でもあり、女神を描く際には頭上に置かれた。姿としては、下エジプトの赤冠をかぶって弓矢を持つ女性として表されるのが基本で、権威を示すウアス杖と生命を示すアンクを携えることも多い。本項に掲げるのはサイスに由来する末期王朝期の金象嵌青銅像で、赤冠をいただく立像である。

もう一つの系統が機織りである。ネイトの名をヒエログリフで綴ったときの一部が織機に似ることから、機織りの女神と解された。この連想は決定的だった。原初の水を司る神が、織機で世界を織り上げる神へと性格を変えていく。織るものはやがてミイラの包帯と屍衣にまで及び、そこから葬送の職能が生じる。

葬送の場では、イシス・ネフティス・セルケトとともに、棺と内臓を守る四柱の女神の一柱に数えられた。カノプス壺のうち胃を納める壺を守るドゥアムトエフに付き添い、近づく悪霊に矢を放って追い払うとされる。戦いの女神であることと死者を守ることが、ここで一つに結ばれている。

系譜と関係

夫とされる神は伝わらない。単独で生んだとされることから、処女なる母神として語られてきた。子とされるのはラー、アペプ、そしてセベクである。ナイルの水源と結びつけられる文脈では、羊頭の神クヌムの妻とされることもあった。

ギリシア人はネイトをアテーナーと同一視した。ヘロドトスは『歴史』第二巻でサイスの神殿を一貫して「アテーナーの神殿」と記し、プラトンも『ティマイオス』でこの同一視に触れる。ともに戦いと機織りを司ることが根拠と考えられている。プルタルコスはこの女神をイシスと重ねて語った。

文化的足跡

初期王朝時代のエジプトで、この女神の名は王家の女性の名に繰り返し現れる。第一王朝のネイトホテプ、メルネイトがその例で、当時のネイトの重みを示している。その後ハトホルなどが台頭して相対的に地位を下げるが、サイスが首都となった第二十六王朝(前664〜前525年)に再び国家の神となった。

新プラトン主義の哲学者プロクロスは、サイスの神殿に刻まれていたという銘文を伝えている。自分は過去と現在と未来のすべてであり、その衣を掲げた者はまだいない、という趣旨の一句である。この文句は近代ヨーロッパで「ヴェールを被ったイシス」の主題となり、人間の手の届かない自然の秘密を語る比喩として、詩や哲学に繰り返し引かれた。カントもシラーもこれに触れている。エジプトの一都市の女神が、遠く隔たった時代の思想の比喩になった例である。

北アフリカで信仰されたベルベル系の女神タニトとも同一視された。タニトの名をエジプト語の「ネイトの地」に由来するとみる解釈もあるが、確かなものではない。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
アテーナー ギリシア神話 同一視
interpretatio graeca。ヘーロドトス『歴史』II はサイスの女神ネイトの神殿を一貫して「アテーナーの神殿」と記す
イシス エジプト神話 同一視
プルタルコス『イシスとオシリスについて』はサイスの女神を語るなかで、この女神をイシスと重ねて伝える。近代の「ヴェールを被ったイシス」の主題はこの一節に発する。
タニト フェニキア・カナン神話 同一視
北アフリカのベルベル系女神タニトとの同一視。ともに軍神かつ処女なる母神とされた。タニトの名をエジプト語の「ネイトの地」に遡らせる語源説もあるが確実ではない。

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資料

Wikidata
Q191815 — 骨格データの出典
Commons
Neith — 図像カテゴリ