テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
ディアーナ
PLATE — DIANA
ROMA · ローマ神話
DIANA

ディアーナ

ディアナ · ダイアナ · アルテミス(ギリシア)

Luigi Spina CC BY-SA 4.0

ローマ神話の女神。狩猟と森と野生の獣を司る。アルテミスと同一視されて物語を引き受けたが、ネミ湖畔の森に、殺し合いで継がれる祭司を置くというイタリア固有の来歴をもつ。

01

解説

概要

ディアーナ(Diana)は、狩猟・森・野生の獣・出産・辻と月を司るローマの女神である。ギリシアのアルテミスと同一視され(インテルプレタティオ・ロマーナ)、デーロス島での誕生、ユーピテルとラートーナの子、アポローンの双子という設定を丸ごと引き受けた。ディアーナの神話として語られるものは、ほぼアルテミスのものである。

だが名は別の系統に属する。Dīāna はラテン語 dīus(神的な)を経て印欧祖語 diwyós(天の、神的な)に遡り、その語幹 dyew-(昼の空)はユーピテルの名と同じ根である。ギリシア語のアルテミスとは何の関係もない。ウァッロもキケローも、この名を dies(昼)と結びつけて、闇を昼に変える者と説明した。同一視は職能の重なりによるものであって、名の同源ではない。この区別は、ゼウスとユーピテルの関係——同一視と同源の両方が成り立つ——と比べると分かりやすい。

神話・物語

物語のほとんどが移入である。アクタイオーンが鹿に変えられて猟犬に食われる話も、ニオベーの子らを射殺す話も、在来のディアーナにはなかった。ローマの側で固有なのは、物語ではなく祭祀の来歴である。

最も古い層は、アリーキア近郊のネミ湖畔にある。「ディアーナの鏡」と呼ばれた火口湖のほとりの森に聖域があり、そこに仕える祭司はレークス・ネモレーンシス——森の王——と称した。この職は選挙でも世襲でもない。逃亡奴隷が神木の枝を折り取り、現職の祭司を決闘で殺すことによって継いだと伝えられる。ストラボーンもスウェートーニウスも、この慣行を異様なものとして書き留めている。ローマの目と鼻の先に、殺し合いで継がれる祭司職があった。ジェイムズ・フレイザーは『金枝篇』を、この一点への問いから書き起こしている。もっともフレイザーの説明そのものは、今日の宗教史では受け入れられていない。

ローマ市内では、王政期のセルウィウス・トゥッリウスがアウェンティーヌスの丘に神殿を建てたと伝えられる。この丘は市壁の外、平民の側にあり、神殿はラテン都市同盟の共同の聖所とされた。奉献の記念日である8月13日は奴隷の休日でもあった。同じ日、ネミでは女たちが灯りをともして森へ詣でる祭(ネモラーリア)が行われている。狩猟の女神は、体制の外側にいる者たちの神でもあった。

ギリシア風の祭祀が公式に入るのは前399年、疫病に際して行われた最初のレクティステルニウムである。このときネプトゥーヌス、ヘルクレースとともにディアーナが寝椅子へ迎えられた。ローマの女神がギリシアの女神として遇された日付が、そこに残っている。

図像と象徴

持物は弓・箙・松明。聖獣は鹿と猟犬。短衣に半長靴という猟装は、アルテミスの型をそのまま受け継ぐ。3世紀の詩人ネメシアーヌスは、金の弓と金の矢、金の外套、紫の半長靴、宝石の留金の帯、リボンで束ねた髪という装いを描いている。

ローマ独自の相は、顔が三つあることに出る。ディアーナ・トリウィアは「三つ辻」の女神であり、Y字路を守る。この位置には冥界へ通じるという含みがあった。ディアーナ・ルーキフェラは光をもたらす者、すなわち月である。前43年にプブリウス・アッコレイユス・ラリスコルスが打った銀貨には、弓をもつ姿、花をもつ姿、そして特定しがたい中央の姿の三体を、横木で繋いだ神像が刻まれている。アンドレアス・アルフェルディはこれをネミの古い三面のディアーナ像と読んだ。前6世紀に遡るエトルリアの型を持つとされ、その像が前43年になおネミの森に立っていたことを、この貨幣が示している。三日月を戴くのは、ギリシアのアルテミスでは後代の追加だが、ディアーナでは早くから分かちがたい。

もう一つ、ローマ人が「ディアーナ」と呼んだ像にエペソス型がある。無数の卵形の膨らみを胸から垂らした直立像で、ハドリアーヌス帝の別荘からも出土した。山野を走る狩人と、この柱のような像とが、同じ名で呼ばれていた。

系譜と関係

ギリシア由来の系譜では、父ユーピテル、母ラートーナ、双子の兄弟アポロー。ディー・コンセンテースの一柱に数えられる。

在来の関係はこれと別である。ネミでは、ディアーナと、泉のニュンペーであるエーゲリアと、森の男神ウィルビウスの三柱が組をなした。ウィルビウスは、アルテミスに甦らされたヒッポリュトスと同一視される。

属州では、この女神の名が在来の女神に貸し出された。黒い森のアブノバは、バーデンヴァイラーの浴場から出た祭壇に DIANAE ABNOBAE と刻まれ、アルデンヌのアルデュイナも同じくディアナと結ばれた。一方、ヘルウェティイ族の熊の女神アルティオにはその種の碑文がない。狩りに関わるケルトの女神が、すべてディアナへ読み替えられたわけではない。

領分はユーノーと重なった。出産に呼ばれる女神は本来ユーノー・ルーキーナだが、ディアーナも同じ役でディアーナ・ルーキーナ、あるいはユーノー・ルーキーナと呼ばれる。アリーキアの聖域には赤子と子宮を象ったテラコッタの奉納品が積まれ、仔犬と孕んだ牝犬の世話まで行われていた。狩る神が、産む側の守護でもある。

月神としてはルーナと、辻と冥界の相ではヘカテーと重ねられ、あわせてディアーナ・トリフォルミス(三体のディアーナ)と呼ぶ。歴史家C・M・グリーンはこれを、別々の女神でも寄せ集めでもなく、狩人としてのディアーナ、月としてのディアーナ、冥界のディアーナなのだと要約している。

文化的足跡

ネミの祭司職への問いから始まったフレイザー『金枝篇』(1890〜1915年)は、比較宗教学と20世紀の文学に絶大な影響を与えた。エリオットもジョイスも、ここから語彙を汲んでいる。学説としては退けられた本が、文化史のうえでは生き延びた例である。

近世フランスの絵画で、ディアーナは特別な役を負った。フォンテーヌブロー派の《狩猟の女神ディアナ》をはじめ、宮廷は寵姫ディアーヌ・ド・ポワチエをこの女神になぞらえて繰り返し描かせている。名が同じというだけの理由で、女神の図像と実在の人物の肖像とが混ざり合った。

月への連想は言葉に残った。ダイアナは英語圏の女性名として定着し、「月=女性」という近代西洋の連想の主要な出所の一つがこの女神である。現代の創作では、ディアーナはたいていアルテミスと区別されないまま、月と狩りの女神として登場する。

02

領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
アルテミス ギリシア神話 同一視
interpretatio romana。ディアーナはネミの森の祭祀(レークス・ネモレーンシス)を持つイタリア固有の女神で、狩猟・出産・辻の職能の重なりからアルテミスと同一視された。名 Dīāna は *dyew-(昼の空)に遡りユーピテルと同根であって、Ἄρτεμις とは同源ではない。前399年の最初のレクティステルニウムがギリシア風祭祀への公式な組み込みの日付
アブノバ ケルト神話 同一視
バーデンヴァイラーのローマ浴場出土の祭壇 DIANAE / ABNOBAE、およびミューレンバッハの碑文が同一視を示す
アルデュイナ ケルト神話 同一視
ガロ=ローマ期にディアナと同一視されたとされる。ただしアブノバと違い DIANAE ARDUINNAE 形の碑文はなく、分布とトゥールのグレゴリウスが伝えるアルデンヌのディアナ崇拝からの推定を含む
アルトゥメ エトルリア神話 同一視
狩猟と獣という領分で対応する。ただしディアーナが月と結びついたのに対し、エトルリアで月を司るのはティウルであり、アルトゥメに月の性格は伝わらない。
デヴァナ スラヴ神話 同一視
ヤン・ドゥウゴシュ『ポーランド王国年代記』がディアーナに擬して記述。ただし一覧全体の信頼性は争われている

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

フル系図ページを開く →
04

資料

Wikidata
Q132543 — 骨格データの出典
Commons
Diana — 図像カテゴリ