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月神

月を神格として扱う神々のファセット。太陽神と対をなすように見えるが、対称ではない。月は満ち欠けし、消えてまた現れる。多くの体系で月は、死と再生・暦・不死・狂気といった主題と結びつく。

LECTIO — 解説

ギリシアのセレーネーは馬車で夜空を渡り、眠り続けるエンデュミオーンを愛した。ローマではルーナで、二頭立ての車に乗り、四頭立ての太陽神と対をなす図像が帝政期の浮彫に広く行き渡った。のちにアルテミス/ディアーナが月の位置を引き受けるが、これも古典期以降の重ね合わせである。メソポタミアのナンナ/シン(ウルの神)は男神で、月の満ち欠けを数える者、すなわち暦と計算の神である。エジプトのトートは月と書記と計算を同時に司る。ここでは月は「数える」ものである。同じエジプトのコンスは「渡る者」の名のとおり夜空を横切る運行そのものを担い、三日月は鎌形の刀に見立てられて「鋭きコンス」の添え名を生んだ。中国の嫦娥は不死の薬を盗んで月へ逃れた女性で、月を司る神というより月に住む者である。日本のツクヨミは記紀に名が出るものの物語がほとんど残らず、太陽神の兄弟という位置だけがある。インドのソーマは月であると同時に、祭儀の飲料そのものである。アステカのテクシステカトルは太陽になり損ねた神である。火に飛び込むのをためらった罰に顔へウサギを投げつけられ、光を削がれて月となった。月の弱い光が、劣位の由来として説明されている。インカ神話ママ・キリャは太陽神インティの姉にして妻で、日月が金と銀という素材の対として造形される点に特徴がある。

図像は、三日月、満月の円盤、銀色、そして動物では兎とヒキガエルが繰り返し現れる。月面の模様を兎と見るのは中国・日本・インドに共通するが、これは同じ模様を見た結果であって、伝承の共有を証明しない。アンデスでは同じ模様が、月に恋して昇った狐を抱きしめた痕と語られた。メソポタミアでは三日月は雄牛の角と重ねられ、月神の冠になった。

注意すべきは、月神の性別が体系ごとに反転することである。ギリシアで女神、メソポタミアで男神、日本でも男神とされる。「月=女性」は近代西洋の連想であって、比較の出発点にしてよい前提ではない。太陽神と月神が兄妹あるいは夫婦であるという型もよく見つかるが、これは物語の作りやすさによる収束かもしれず、起源の共有とは別の話である。

この役割の神格

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