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ヒュプノス
PLATE — ὝΠΝΟΣ
HELLAS · ギリシア神話
ὝΠΝΟΣ

ヒュプノス

ヒプノス · ヒュプノス · Hypnos

Carole Raddato CC BY-SA 2.0

ギリシア神話の眠りの神。ニュクスの子で、死の神タナトスと双子。非情な兄に対して穏やかな神とされ、ゼウスを二度まで眠らせた。

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解説

概要

ヒュプノス(Ὕπνος / Hypnos)は、眠りを神格化したギリシアの神である。名はそのまま「眠り」を意味し、印欧祖語の *sup-no-(眠り)に遡る。ローマのソムヌス(Somnus)に対応する。

ニュクス(夜)の子で、死の神タナトスと双子。非情な兄に対して、こちらは穏やかで人に恵み深い神として語られる。パウサニアースは彼をムーサたちの最も親しい友と呼び、トロイゼーンにムーサたちと共有する祭壇があったと記す。眠りは人の生の半分を占めるが、独立した神殿はほとんど知られていない。

神話・物語

最も名高いのは『イーリアス』第14巻、いわゆる「ゼウスの惑わし」である。戦況を変えたいヘーラーは、ゼウスを眠らせるために彼を頼る。だが彼は渋った。以前にも同じ依頼を受け、ヘーラクレースの帰路を荒海で妨げるためにゼウスを眠らせたところ、目覚めた神の怒りを買い、母ニュクスのもとへ逃げ込んでかろうじて助かっていたからである。ニュクスにはゼウスも手を出せない。

黄金の椅子では動かなかった彼が承知したのは、カリスたちの末娘パーシテアーを妻に与えるという約束に対してであった。しかも彼は、ヘーラーに冥界の河ステュクスにかけて誓わせ、地下の神々を証人に立てさせている。取引の相手としては用心深い神である。

イーデー山では、ヘーラーがオーケアノスとテーテュースの仲を取りもちに行くという口実でゼウスに近づき、そのあいだ彼は松の木に鳥の姿で潜んで機を待った。ゼウスが眠ると、彼はアカイア勢の船へ飛んでポセイドーンに知らせる。戦況はここで反転した。

オウィディウスが描く住まいは、キンメリオイ人の地の奥にある洞窟である。日の光も鶏の声も届かず、入口には芥子をはじめとする眠りを誘う草が茂り、黒檀の寝台に彼が横たわる。周りにはモルペウスら夢の神々オネイロイが漂い、忘却の河レーテーの水が洞窟から流れ出す。ホメーロスはレームノス島を住まいとし、『神統記』では兄弟とともにタルタロスの領域に館を構えるとする。所在の伝承は一定しない。

エンデュミオーンをめぐる異伝もある。キオスのリキュムニオスによれば、彼はエンデュミオーンを愛し、その眼を見ていたいがために、眠らせながら目は開いたままにさせたという。この物語の相手は通常、月の女神セレーネーである。眠りの神を据えた版は珍しい。

図像と象徴

標識は翼である。ただし背の翼ではなく、こめかみから生える小さな一対の翼として表されることが多い。持物としては、眠りの液体を注ぐ角と、芥子の茎が伴う。

本ページの主画像は、後1〜2世紀のブロンズ頭部(イタリアのチヴィテッラ・ダルノ出土、大英博物館蔵)で、ヘレニズム期の原作の模刻とされる。片側のこめかみに翼を残し、目を伏せて傾いだ顔は、彫刻が眠りそのものを主題にしうることを示している。

陶画ではたいてい兄タナトスと対で現れる。前515年頃のエウプロニオスのクラーテールでは、サルペードーンの遺体を兄弟で運び上げる。テーセウスに置き去りにされたアリアドネーを描く壺絵では、彼が眠りの水を頭上に注いでいる。ローマ期には寝室の床モザイクの主題にもなり、モンテネグロのリサンにある邸宅では、寝室の床に横たわる彼が今も残る。

系譜と関係

母はニュクス。父を立てる伝承ではエレボス。双子はタナトスで、モロス(定業)、ケールネメシスモイライらと同じ母から生まれた兄弟にあたる。夢の神々オネイロイは、彼の子とも兄弟ともされる。妻はカリスの一人パーシテアー——『イーリアス』でヘーラーが報酬として約束した相手である。

兄との対比が、この二柱を理解する要になる。タナトスには祈りも供物も通じないが、ヒュプノスは頼まれて働き、報酬を要求し、失敗を恐れて逃げる。死は交渉できないが、眠りは交渉できる。ギリシア人はその差を、双子という形式の上に置いた。

文化的足跡

英語の hypnosis(催眠)は彼の名に、insomnia(不眠)や somnolent はラテン名ソムヌスに由来する。眠りをめぐる近代の語彙は、ギリシア名とラテン名の双方から広がった。

彼の洞窟に漂う夢の神モルペウスの名は、19世紀初頭に芥子から単離された鎮痛薬モルヒネに与えられている。洞窟の入口に芥子が茂るというオウィディウスの描写と、その薬理とが、二千年を隔てて名の上でつながった。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ソムヌス ローマ神話 同一視
ソムヌスはギリシアのヒュプノスのローマにおける名であり、詩人が同一の神格として扱った。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q189347 — 骨格データの出典
Commons
Hypnos — 図像カテゴリ