セレーネー
セレネ · ルーナ(ローマ) · メーネー
ギリシア神話で月そのものを司る女神。ティタン神族の一柱で、太陽神ヘーリオス、暁の女神エーオースと兄妹をなす。三日月をいただき車で夜天を渡り、牧人エンデュミオーンへの愛の物語で知られる。
解説
概要
ギリシア神話で、月そのものを司る女神。ティーターン神族の一柱で、夜ごと空を渡って地上を照らす。太陽神ヘーリオス、暁の女神エーオースと兄妹をなし、光り輝く天体の一族に連なる。額あるいは頭上に三日月をいただき、車を駆って夜天を行く姿で思い描かれた。静かな月光の女神として、しばしば恋の物語とともに語られる。
神話・物語
セレーネーはティーターンのヒュペリーオーンとテイアーの娘で、日輪の神ヘーリオス、暁の女神エーオースの妹にあたる。最もよく知られるのは、美しい牧人(一説には王)エンデュミオーンへの愛である。彼に恋したセレーネーは、その姿が永遠に若く保たれるよう、ゼウスに願って永遠の眠りを授けてもらった。以来、女神は夜ごと、眠り続けるエンデュミオーンのもとを訪れたという。二人のあいだには五十人の娘が生まれたとも伝えられる。ほかにも、牧神パーンが白い羊毛で彼女を誘った話や、ゼウスとのあいだに娘パンディアをもうけた話が伝わる。
図像と象徴
セレーネーは、頭上に三日月または輝く円盤をいただき、風にひるがえるヴェールを弓なりに背後へ広げた姿で表される。このたなびく布は、夜空にかかる月の弧を思わせる。二頭立ての車を駆り、しばしば松明を手にして夜を渡る。太陽神ヘーリオスと対をなし、兄が沈むと妹が昇るという交替として描かれることも多い。三日月を牛の角に見立て、車を牛が牽く図像もある。
系譜と関係
父はティーターンのヒュペリーオーン、母はテイアー、兄妹にヘーリオスとエーオースがある。時代が下ると、セレーネーは狩りと月の女神アルテミスや、冥界に関わる女神ヘカテーとしばしば習合し、月をめぐる三柱の女神が一つに重ね合わされていった。ローマではルーナと同一視される。ただしこうした重ね合わせは後代の解釈であって、本来のセレーネーは、あくまで月そのものを体現する月の女神であった。
文化的足跡
眠る美青年エンデュミオーンを見つめる月の女神という主題は、静謐な愛の情景として、古代の石棺彫刻から近代の絵画・詩にいたるまで繰り返し描かれた。月を意味するギリシア語セレーネーは、元素セレン(セレニウム)や、月を研究する学問セレノロジーなど、今日の学術語にもその名を残している。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。