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ポセイドーン
PLATE — ΠΟΣΕΙΔΩ͂Ν
HELLAS · ギリシア神話
ΠΟΣΕΙΔΩ͂Ν

ポセイドーン

ポセイドン · ネプトゥーヌス(ローマ) · ポテイダーン

DerHexer CC BY-SA 3.0

ギリシア神話の海神。籤引きで海を得たオリュンポスの一柱だが、その古層は「大地を揺るがす者」であり、地震と馬を司る内陸の神であった。海はあとから来た領分である。

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解説

概要

ポセイドーン(Ποσειδῶν / Poseidon)は、海・地震・馬を司るギリシアの神である。ゼウスとハーデースの兄弟であり、オリュンポスの一柱として船乗りを守り、多くの都市の後見神とされた。

海の神として知られるが、それはこの神の全体ではない。ミュケナイ時代の線文字B文書には po-se-da-o、po-se-da-wo-ne の形で、ゼウスより高い頻度で現れる。ピュロスでは主神の位置にあった。そこでの称号は「大地を揺るがす者」(エネシダーオーン。古典期のエンノシガイオス)であり、海との結びつきを示す証拠は乏しい。ギリシア語を話す人々は内陸から来た。海神ポセイドーンは、あとから成った姿である可能性が高い。

語源は決着していない。「主」(posis)と「大地」(da)に分けて「大地の夫」と読む説は、後述するデーメーテールとの結びつきを説明できるが、ブルケルトは da の意味が定まらないとしてこれを退ける。第二要素を「水」と見て「水の主」とする説もある。ベーケスはギリシア語以前の語と見る。

神話・物語

ホメーロスによれば、クロノスを倒したのち三兄弟が籤で世界を分け、ゼウスが天、ポセイドーンが海、ハーデースが冥界を得た。大地とオリュンポスは共有とされる。ただし『イーリアス』でこの分割を語るのはポセイドーン自身であり、しかも末弟ゼウスの指図に従う理由はないと突っぱねる場面での発言である。中立の説明ではなく、権利の主張として読むべきものである。

アルカディアとボイオーティアには、これとは別の古い層が残る。パウサニアースがテルプーサで記録した伝承では、デーメーテールが牝馬に姿を変えて逃れようとし、牡馬となったポセイドーンに犯されて、名を口にすることを許されない娘デスポイナと、駿馬アレイオーンを産む。怒った女神はそこで「エリーニュス」(復讐の女神)と呼ばれた。ピガリアでは「黒き女神」(メライナ)として洞窟に籠る。この祭祀のポセイドーンは海神でも天空神でもなく、馬の姿をした地下の神である。ヘーシオドス『神統記』が語る、メドゥーサとの交わりから翼馬ペーガソスが生まれる話も同じ層に属する。

アッティカの領有をめぐるアテーナーとの争いは、パルテノーンの西破風に彫られた。ポセイドーンは三叉戟でアクロポリスの岩を打って泉を湧かせ、アテーナーは橄欖樹を生やし、後者が選ばれる。敗れた神はアッティカの平野を洪水で襲ったと伝えられる。同種の争いはアルゴス、コリントス、トロイゼーンでも語られ、ポセイドーンはたいてい負ける。海を持ちながら陸では取り分が少ない神という位置が、繰り返し語り直されている。

オデュッセイア』では、息子キュクロープスポリュペーモスを盲いさせたオデュッセウスを憎み、十年にわたって帰郷を妨げた。叙事詩を動かしているのが神の私憤であることは、この作品の骨格そのものである。

図像と象徴

持物は三叉戟(トリアイナ)。もとは地中海の漁で用いる魚突きの道具であり、王笏でも戦の武器でもない実用の器具が神の徴になった珍しい例である。聖獣は馬とイルカ。牡牛も犠牲に供され、コリントスでは松が聖樹とされた。

造形はゼウスと紛らわしい。髭をたくわえ、上体を露わにし、右腕を振り上げる壮年男性という型が両者に共通するためで、持物を欠くと同定できない。1928年にアルテミシオン岬沖から引き上げられた前460年頃の等身大を超える青銅像が、その代表例である。右手が投げようとしたものが雷霆ならゼウス、三叉戟ならポセイドーンだが、それが失われている。今日ではゼウス説が優勢だが、決着はしていない。この一体が、ギリシア彫刻における両神の見分けにくさをそのまま体現している。

海神としての図像が本領を発揮するのは、むしろローマ期の床モザイクである。海馬(ヒッポカンポス)に牽かせた車に立つ神を中央に置き、四方に海獣と魚とネーレーイスを配する構図は、広い床面に合っている。対してギリシアの壺絵が好んだのは、三叉戟を構えて巨人と戦う姿や、橄欖樹の前でアテーナーと向き合う姿であり、海そのものはあまり描かれない。

系譜と関係

父はクロノス、母はレアー。兄弟姉妹はヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ゼウス。呑まれた順の逆に吐き出されたため、生まれの順と出直しの順は逆になる。正妻はネーレウスの娘アムピトリーテー。逃げる彼女をイルカが説き伏せて連れ戻したと伝えられ、その功でイルカは星座になった。子にトリートーン

系譜の顔ぶれが、この神の性格を語っている。ポリュペーモス、アンタイオス、アロアダイ兄弟、オーリーオーンテーセウス、そして翼馬ペーガソス。怪物と乱暴者と英雄が入り混じる。海と地震を司る神の子が統御されない力として現れるのは、筋が通っている。

ローマではネプトゥーヌスと同一視された(インテルプレタティオ・ロマーナ)。ただしネプトゥーヌスは本来むしろ淡水の神であり、その祭は真夏の渇水期に置かれている。二柱を同じ神として語ると、この違いが消える。

文化的足跡

信仰の中心はコリントス地峡であり、二年ごとのイストミア大祭がこの神に捧げられた。地峡は海と陸の結び目である。スーニオン岬の神殿は、アテーナイへ帰る船が最初に見る建物として、海に突き出した崖の上に立つ。祈りの場所が航路の要衝に置かれていることが、この神が何を握っていたかを示している。

プラトーン『ティマイオス』『クリティアース』は、アトランティスをポセイドーンの領土として描いた。海に沈む島という主題は、ここから近代の擬似考古学と冒険小説へ流れ込んでいる。1846年に発見された太陽系第八惑星が海王星(Neptune)と名づけられたのは、ローマ名を経由した命名である。ゲームや漫画では三叉戟を掲げる海神として広く知られるが、テルプーサの牡馬の神まで描かれることはまずない。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ネプトゥーヌス ローマ神話 同一視
interpretatio romana。ネプトゥーヌスは本来川と泉の神(セルウィウス)で、祭ネプトゥーナーリアが渇水期の7月23日に置かれることがこれを示す。海神としての性格はポセイドーン受容による。名も同源ではなく、両者は別エンティティとして扱う
エール フェニキア・カナン神話 同一視
1世紀のパルミラ出土の二言語碑文が「大地の創造者エール」をポセイドーンと等置する。前8世紀のカラテペ碑文では同じ称号がバビロニアの水神エアのルウィ語形に対応しており、局所的な同定である。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q41127 — 骨格データの出典
Commons
Poseidon — 図像カテゴリ