ソムヌス
ソムヌス · Somnus
ギリシアのヒュプノスに対応するローマの眠りの擬人神で、死(モルス)の兄弟。オウィディウスは扉のない洞窟の館と、人・獣・無生物の姿で夢に現れる三人の息子を描いた。舵手パリヌールスを眠らせて海に落とした。
解説
概要
ローマ神話において、ソムヌス(Somnus、「眠り」)は眠りの擬人神である。ギリシアの対応者はヒュプノスである。ソムヌスは冥界に住んだ。ウェルギリウスによれば、ソムヌスは死(モルス)の兄弟であり、オウィディウスによれば、ソムヌスには「千人」の息子ソムニア(「夢の形」)があり、「多くの姿を模して」夢に現れる。オウィディウスはソムヌスの息子のうち三人の名を挙げる。人の姿で現れるモルペウス、獣の姿で現れるイーケロス(ポベートール)、無生物の姿で現れるパンタソスである。
ウェルギリウス
ギリシアの伝統に従い、ウェルギリウスは眠りと死を兄弟とし、冥界の入口近くに隣り合う住処を置く。『アエネーイス』第6巻の冥界の入口には、悲しみ、復讐の心労、青白い病、老い、恐れ、飢え、貧困、そして死と眠り——「死の兄弟」——が住む。
『アエネーイス』第5巻では、ソムヌスが舵手パリヌールスを眠らせて海に落とす。神々の姿をとって現れ、レーテーの水を含んだ枝でパリヌールスの目を打つ。眠りが死を招く場面である。
オウィディウス
『変身物語』第11巻は、ソムヌスの館を描く。キンメリオイ人の国の近くの洞窟で、太陽の光が届かず、霧が立ちこめ、レーテーの流れが石の上を音を立てて流れ、芥子と無数の薬草が眠りをもたらす。館には扉がなく、番人もいない。中央の黒檀の寝台に、ソムヌスが横たわる。周囲に無数の夢が眠っている。
イーリスがユーノーの命でこの館を訪れ、ソムヌスにケーユクスの死をアルキュオネーに告げるよう求める。ソムヌスは息子モルペウスを遣わす。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ウォーターハウス《眠りと異母兄弟の死》である(1874年)。
眠りと死が兄弟であるという構図が、この擬人神を規定する。ギリシアのヒュプノスとタナトスの対を、ローマの詩人がラテン語で継承した。
芥子とレーテーの水が、眠りの象徴である。
関わる神格・伝承
ヒュプノスに対応する。モルスの兄弟。子はモルペウス、イーケロス、パンタソス。
文化的足跡
「ソムヌス」は英語の somnolent、insomnia などの語源である。ウォーターハウスの絵画は、眠りと死の兄弟という古代の観念を近代に伝えた。