ケレース
ケレス · セレス
ローマ神話の穀物と農耕、豊穣と母性の女神。平民の守護者で、主要十二神のうち農耕を司る唯一の神格。ギリシアのデーメーテールと同一視される。
解説
概要
ケレース(Cerēs / Ceres)は、穀物と農耕、豊穣と母性を司るローマの女神である。平民の守護者としても知られ、ローマの主要十二神(ディー・コンセンテース)のうち、農耕を司る唯一の神格に数えられる。ギリシアのデーメーテールと同一視されるが、その起源はイタリア土着の古い穀物神にさかのぼる。
神話・物語
ケレースの信仰は、ギリシアからの輸入以前、イタリア半島に根づいていた。前600年頃の碑文や、古い専属神官フラメン・ケリアーリスの存在が、その古さを物語る。しかし物語のほとんどは、インテルプレタティオ・ロマーナを通じてデーメーテールから受け継がれたものである。前496年、飢饉に見舞われたローマがシビュラの書の託宣に従ってギリシアの祭祀を導入したことが、その大きな契機となった。
中心となる筋書きは、娘プロセルピナ(ギリシアのペルセポネー)をめぐる物語である。冥王プルートーに攫われた娘を捜し、悲しみに沈んだケレースが大地の実りを止めたため冬が訪れ、娘が戻ると春がよみがえる——季節の循環がこう説かれた。母娘をめぐるこの信仰は、ギリシアのエレウシースの秘儀とも深く結びついた。
図像と象徴
ケレースの標章は、たわわに実った麦の穂である。穂を束ねて手にし、あるいは麦の穂で編んだ冠をいただく、成熟した母なる女性として表される。夜を徹して娘を捜した松明、収穫の鎌、豊穣を注ぐ角状の器(コルヌコピア)、そして芥子もその持物に数えられる。スペインのメリダに伝わる前1世紀のローマ彫像は、悠然と坐すこの女神の典型的な姿を今に伝える。
系譜と関係
父はサートゥルヌス、母はオプスで、サートゥルヌスの子であるユーピテル、ユーノー、ネプトゥーヌス、プルートー、ウェスタと兄弟姉妹の関係にある。ユーピテルとのあいだに娘プロセルピナをもうけた。ギリシアのデーメーテールとは歴史上の同一視によって結ばれるが、アウェンティヌスの丘に祀られた三柱(ケレース・リーベル・リーベラ)の祭祀や、平民の造営官が司ったその崇拝は、ローマ固有のものである。
文化的足跡
穀物や穀類を指す英語「 cereal 」は、この女神の名に由来する。1801年に最初の小惑星として発見された準惑星ケレスも、その名を与えられた。豊穣を祝う祭ケレアリアとともに、ケレースの名は今日の語彙のなかに息づいている。FGO・女神転生など現代の創作にも登場する。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。