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ヘスティアー
PLATE — ἙΣΤΊΑ
HELLAS · ギリシア神話
ἙΣΤΊΑ

ヘスティアー

ヘスティア

Museum of Classical Archaeology, University of Cambridge PUBLIC DOMAIN

ギリシア神話の炉と竈の女神。オリュンポス第一世代の長女でありながら固有の神話に乏しく、家々と都市の炉に宿って火を守る。処女を貫き、供犠では最初と最後に祀られた。

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解説

概要

ヘスティアー(Ἑστία / Hestia)は、ギリシア神話の炉と竈(かまど)の女神である。クロノスとレアーの子の長女で、ゼウス・ポセイドーンらオリュンポスの神々の姉にあたる。天空や海のような華々しい領分を持たず、固有の神話もほとんど残さない。それでいて、家々のかまどと都市の公けの炉に宿り、火を絶やさず守る存在として、日々の暮らしと共同体の中心に据えられた。ギリシア人は供犠に際し、最初の献酒をこの女神に捧げ、最後もまた彼女で締めくくったと伝わる(火神)。

神話・物語

『神統記』によれば、ヘスティアーはクロノスとレアーの間に最初に生まれた。父クロノスは我が子に王位を奪われることを恐れて生まれた順に呑み込んだため、長女ヘスティアーは真っ先に呑まれ、ゼウスの策で吐き出されるときには最後に出てきた。ここから彼女は「最も年長にして最も年少」と呼ばれる。

ホメーロス風讃歌は、ポセイドーンとアポローンの求婚を退けた彼女が、ゼウスの前で永遠の処女であることを誓ったと語る。ゼウスは代わりに、家の中心に座を与え、あらゆる供犠で最初に祀られる誉れを授けた。動きの多い他のオリュンポス神とは対照的に、ヘスティアーは炉のそばを離れず、神々の争いにも加わらない。この静けさこそが彼女の性格である。

図像と象徴

ヘスティアーは物語に乏しいのと同じく、図像にも乏しい。描かれるときは、頭から衣を被り、慎ましく坐すか立つ女性として表される。これという持物を持たず、身にまとった長衣とヴェールそのものが標識となる——顔を半ば覆う姿は、公けの視線から退いた炉の女神にふさわしい。ローマ期の模刻「ジュスティニアーニのヘスティア」(前五世紀の原作に遡る)はその典型で、直立して右手を上げ、厚い衣に全身を包む。炎そのものもまた彼女の顕現であり、消えることのない炉の火が、像に代わって女神を指し示した。個体としての彫像より、火のともる炉の場そのものが崇拝の焦点だったのである。

系譜と関係

父はクロノス、母はレアー。同じ第一世代の兄弟姉妹に、ゼウス・ポセイドーン・ハーデース・ヘーラー・デーメーテールがいる。生涯を通じて配偶者も子も持たない。

ローマでは炉の女神ウェスタと同一視された(インテルプレタティオ・ロマーナ)。ただしウェスタは、ローマ国家の永遠の火を守る巫女ウェスタリス(ウェスタの処女)の祭祀を伴う国家的な信仰であり、ヘスティアーの家庭的な色合いとは重心が異なる。両者は同一視されつつも、それぞれの都市の宗教のなかで別々の来歴を歩んだ。詩人エンニウスが挙げるローマの主要十二神ディー・コンセンテースにも、ウェスタとしてその名が刻まれている。

文化的足跡

古代の都市国家では、公館プリュタネイオンの炉にヘスティアーの火が守られ、共同体の象徴となった。植民市を興すときには、母市のこの火を新天地へ運んで新しい炉に灯し、都市どうしのつながりを保証したという。

オリュンポスの十二神の席については、古来ヘスティアーを数える伝と、代わりにディオニューソスを数える伝があり、一定しない。後世には「ヘスティアーが争いを避けて自ら席を譲った」という物語も語られるが、これを裏づける古代の典拠は知られていない。控えめゆえに目立たないこの女神は、現代の創作でも「かまど」や「家庭」の擬人化としてしばしば顔を出す。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ウェスタ ローマ神話 同一視
インテルプレタティオ・ロマーナ。ローマの炉の女神ウェスタと同一視された。ただしウェスタは国家の永遠の火とウェスタリス(巫女)の祭祀を伴う国家的信仰であり、ヘスティアーの家庭的性格とは重心が異なる。
アヌケト エジプト神話 同一視
インテルプレタティオ・グラエカ。ギリシア人はヘスティア、ローマ人はウェスタに当てた

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q41419 — 骨格データの出典
Commons
Hestia — 図像カテゴリ