ペルセポネー
ペルセフォネ · コレー · プロセルピナ
ギリシア神話の女神。ハーデースにさらわれて冥界の女王となり、母デーメーテールのもとへ還る往還が四季の由来を説く。少女コレーとしては春の芽吹きを、女王としては死者の国を体現する。
解説
概要
ギリシア神話の女神。主神ゼウスと豊穣の女神デーメーテールのあいだに生まれ、冥界の王ハーデースにさらわれてその妃となり、冥界の女王となった。母のもとと冥界とを年ごとに往還するその境涯は、種子の死と再生、ひいては四季の循環を説く物語として語られる。乙女としての相はコレー(「娘・乙女」の意)と呼ばれて春と穀物の芽吹きに結びつき、女王としての相は死者の国を統べる。ひとりの神が生と死の両極を担う点に、この女神の際立った特色がある。
神話・物語
最も古いまとまった典拠は『ホメーロス風讃歌』のうち「デーメーテール讃歌」である。野で花を摘んでいたコレーは、大地が裂けて現れたハーデースにさらわれ、地下へ連れ去られる。娘を失ったデーメーテールは嘆きのあまり大地の実りを止め、世界は飢えに瀕した。ゼウスはヘルメースを遣わしてペルセポネーを連れ戻させるが、ハーデースは去り際に彼女へザクロの実を与えていた。冥界の食物を口にした者はそこに縛られる——彼女はザクロの種を食べたために、一年の一部を冥界で過ごさねばならなくなった。母と再会するあいだ大地は実り、彼女が冥界へ降ると草木は枯れる。これが季節の由来である。ただし冥界で過ごす期間には異伝があり、口にした種の数に応じて四か月とも、半年(六か月)とも、三か月とも伝えられる。数の違いは、冬の長さの捉え方が土地ごとに異なったことの反映でもある。
図像と象徴
古典期の図像では、王笏をとり玉座に就いた威厳ある女王として、しばしばハーデースと並んで表される。母デーメーテールと対で描かれるときは、母が笏と麦の穂を持ち、ペルセポネーはエレウシスの秘儀で用いられた先の分かれた松明を掲げることが多い。手にしたザクロは冥界との婚姻の徴であり、豊饒の角(コルヌコピア)は実りをもたらす相を示す。恐るべき冥界の女王でありながら、その名を直に呼ぶことを避け、婉曲な別名で呼ぶ習わしもあった。
系譜と関係
父はゼウス、母はデーメーテール、夫はハーデース。母娘は切り離せない一対として、エレウシスの秘儀やテスモポリア祭でともに崇められた。冥界神としてはヘカテーとも近しく、讃歌ではヘカテーがコレー捜索の場に現れ、のちに冥界で彼女に付き添う者となる。ローマでは、ケレースの娘プロセルピナと同一視された。
文化的足跡
デーメーテールとペルセポネーの物語を核とするエレウシスの秘儀は、前古典期から後4世紀まで千年におよんで続き、死後の希望を説く古代地中海最大の密儀となった。母娘の別離と再会、種子の死と再生という主題は、季節を説く神話の原型として後世に受け継がれ、その略奪の場面はベルニーニをはじめ近代の彫刻・絵画で繰り返し描かれた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。