ハーラーハラ
カーラクータ · ハラハラ · ハーラーハラ毒
乳海攪拌の際、アムリタより先に生じた死の毒。神々と魔族の双方を害し、シヴァがこれを飲んで喉に留めた。シヴァの添え名ニーラカンタ(青き喉)の由来である。
解説
概要
ハーラーハラ(サンスクリット हलाहल)またはカーラクータ(कालकूट、「死の毒」)は、ヒンドゥー神話における毒の名である。
神々と魔族が不死の霊薬アムリタを得るために乳海を攪拌したとき(サムドラ・マンタナ)、そこから生じた。
神話・物語
攪拌からは十四の宝が引き上げられ、両陣営に分配された。しかしアムリタが生じる前に、まずハーラーハラが生じ、双方を害しはじめる。
この毒の放つ致命的な煙に耐えられる者はなく、神々も魔族も窒息して倒れていった。一同はブラフマーのもとへ走り、助けを求める。ブラフマーはシヴァに助力を乞えと告げた。両陣営はカイラーサ山へ赴き、シヴァに祈る。
シヴァは毒のすべてを飲み干すことを選んだ。妻サティーは驚き、毒が胃に達するのを止めようと両手で夫の首を締めた。これによってシヴァは「毒を喉に留めた者」(ヴィシャカンタ)という添え名を得る。毒は彼の喉を青く染めた。それゆえシヴァは「青き喉の者」(ニーラカンタ)とも呼ばれる。
ただし版は一つではない。『リグ・ヴェーダ』10.136.7 と『マハーバーラタ』クンバコーナム版では、ハーラーハラが生じたとき、風の神ヴァーユがこれを手で擦って毒性を弱めた。そののち少量がシヴァに与えられて喉を青くし、残りは黄金の器に集められてヴァーユが消化したという。別の版ではヴァーユが先に飲み、シヴァが最後に飲む。さらに別の版では、シヴァが飲んだのは蛇王ヴァースキのカーラクータの毒であるとされる。ヴァースキはナーガの第二の王であり、シヴァに祝福されてしばしばその首に巻きついていた。乳海攪拌において山を回す綱として神々に用いられたのも、身を硬く伸ばしたこの蛇であった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ナンダラール・ボースの挿絵《世界の毒を飲むシヴァ》である(『ヒンドゥーと仏教の神話』1914年)。
この毒が図像として表されることはほとんどない。表されるのは、それを飲むシヴァの側である。青い喉という特徴が、そのままこの毒の痕跡になっている。
象徴として重要なのは、不死の霊薬を得ようとして、まず死の毒が生じるという構成である。乳海攪拌は共同作業の神話であり、神々と魔族が綱を引き合って初めて宝が現れる。その最初の産物が、双方を殺しかける毒であった。
そして毒を引き受けるのは、攪拌に加わっていなかったシヴァである。飲み込まれた毒は消えるのではなく、喉に留められる。害を無にするのではなく、一身に抱えたまま生きるという解決である。
関わる神格・伝承
飲んだのはシヴァ(あるいはヴァーユ)。乳海攪拌の物語において、クールマ、ヴァースキ、ダンヴァンタリ、ラクシュミーと同じ場面に属する。
ニーラカンタというシヴァの添え名は、この挿話に由来する。喉の青は、今日もシヴァ像を見分ける標の一つである。
文化的足跡
日本語圏では、シヴァの喉が青い理由としてこの毒の話が紹介されることがある。乳海攪拌の物語そのものはアムリタと十四の宝に焦点を当てて語られるのが常で、最初に生じたのが毒であったという点は省かれやすい。
ナーガパンチャミーをはじめ、蛇を祀る祭においてこの挿話は繰り返し語られる。毒を制する神という主題が、蛇の毒への実際の恐れと結びついている。