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ボアン
PLATE — BOAND
CELTAE · ケルト神話
BOAND

ボアン

ボアーン · ボアンド · ボイン

William Murphy CC BY-SA 2.0

アイルランドのボイン川の女神。ダグザとのあいだにオェングスを儲け、禁を犯して知恵の泉に近づいたためにその奔流に呑まれ、川となった。

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解説

概要

ボアン(Boann、Boand とも)は、アイルランドのボイン川(Bóinn)を体現する女神である。トゥアハ・デ・ダナーンの一員で、デルバイスの娘、ベヴィンの姉妹とされる。夫はネフタンともエルクマルとも伝わり、ダグザとのあいだにオェングスを儲けた。

名は『ディンシェンハス』において「白い牝牛」(bó find)と解される。プトレマイオスの『地理学』(2世紀)はこの川をブウウィンダ(Βουουίνδα)と記しており、ケルト祖語 *Bou-vindā「白い牝牛」に遡る形とみてよい。中世の語源説が古代の記録と一致する珍しい例である。

神話・物語

オェングス誕生の物語では、彼女はブルー・ナ・ボーニャに夫エルクマルとともに住む。ダグザはエルクマルを一日の使いに出し、太陽を止めて時の流れを隠した。九か月が一日に畳み込まれ、そのあいだに子が生まれる。『ディンシェンハス』はオェングスの名を「ただ一つの願い」と解し、ダグザこそがボアンの唯一の願いだったからだと説明する。

川の起源譚はより古い層に属する。夫ネフタンに禁じられていたにもかかわらず、ボアンはセガスの泉に近づいた。泉は九本の榛に囲まれ、落ちた実を斑の鮭が食べていた。榛の実も鮭も、アイルランドの伝承では知恵の徴である。彼女が泉のまわりを左回り(トゥアハル)に歩いてその力を試すと、水が噴き上がって海へ駆け下り、ボイン川となった。彼女はその奔流に呑まれ、片腕と片脚と片目を失い、命を落とす。異伝では、ダグザとの不義を洗い落とそうとして泉に近づき、溺れたとする。小犬ダビラも海へ流され、砕けた体の二つの塊がクノック・ダビラという岩になったと伝えられる。

『フロイヒの牛捕り』では、母方の叔母として人間の英雄フロイヒに異界の装いを与える役で現れる。五十の外套と上衣、夜を昼のように照らす五十の槍、金の鈴を付けた五十頭の黒馬——これらでフロイヒはメイヴとアリルの宮廷を圧倒した。

図像と象徴

古代の図像はない。ボアンの像はボイン川そのものである。『ディンシェンハス』の詩は、この川をセヴァーン、ティベリス、ヨルダン、ティグリス、ユーフラテスと並べ、区間ごとに異なる名——セガスの川、ヌアザの妻の腕と脚、大いなる銀の軛、白い榛の川——を列挙する。女神の身体の部位がそのまま川の地名になっている点に、地名譚としてのこの詩の性格がよく表れている。

本サイトが掲げるのはボイン川の写真である。像を持たない神格の場合、その名を負う土地が事実上の図像となる。

系譜と関係

父はデルバイス、姉妹はベヴィン。夫はネフタンとエルクマルの二説があり、エルクマルの妻エフネの別名がボアンだとする伝えもある。ダグザとのあいだの子がオェングス。

『コルマクの冒険』は、ティル・ナ・ノーグにも九本の紫の榛に囲まれた知恵の泉があり、五本の川が流れ出ると語る。マナナン・マクリルはその五本を、知識を汲み取る五つの感覚だと説明する。この泉の榛が「ブアンの榛」と呼ばれることから、ボアンとセガスの泉の物語と共通の起源をもつとみられている。

近代の異教復興運動では、ボアンをブリギッドと同一視したり、その母としたりする説が流布している。中世ケルトの史料にその根拠はない。

文化的足跡

ボイン川流域は新石器時代の巨大な通路墓群を擁し、1993年に世界遺産に登録された。川の名が「白い牝牛」であること、その源に知恵の泉が置かれること、そして冬至の朝日が奥室に差し込むこと——これらを一つの神話的地形として読む解釈が、20世紀後半以降さかんに行われている。ただしその多くは、遺跡の年代(前3200年ごろ)と文献の年代(8世紀以降)を跨ぐ推測である。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

BOAND
ボアン
ケルト神話
ÓENGUS
オェングス
収載データなし
BOAND
ボアン
ケルト神話
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資料

Wikidata
Q781173 — 骨格データの出典
Commons
River Boyne — 図像カテゴリ