アビマニユ
アルジュナプトラ · チャンドラプトラ · ラウドラダリ
アルジュナとスバドラーの子。円陣チャクラヴューハに入る術だけを胎内で聞き覚え、出る術を知らぬまま敵中に孤立して討たれた。
解説
概要
アビマニユ(Abhimanyu / अभिमन्यु)は『マハーバーラタ』の登場人物で、アルジュナとスバドラーの子である。名は「恐れることなく怒りを抱く者」を意味する。月神チャンドラの子ヴァルチャの化身とされ、地上に留まるのは十六年だけという約定のもとに生まれたと語られる。クルクシェートラの戦い十三日目、円陣チャクラヴューハに単身踏み込んで孤立し、七人の大将に囲まれて討たれた。その死は父の復讐の誓いを引き出し、遺児パリークシットを通じてクル王統を次代へつなぐ結節点となる。
神話・物語
出生の由来は次のように語られる。チャンドラは自らの子を地上へ転生させるよう請われたとき、長く引き離されることに耐えられず、十六年だけ地上に留まるという条件をつけた。この約定が、彼の短い生涯をあらかじめ定めている。
母の胎内にあったとき、彼はアルジュナがスバドラーにチャクラヴューハの破り方を語るのを聞いた。しかし話の途中で母が眠ってしまったため、陣に入る術は聞き覚えたものの、出る術を聞かぬままに終わったという。
追放最後の一年をマツヤ国で過ごしたのち、ヴィラータ王は娘ウッタラーをアルジュナに娶らせようとした。アルジュナは自分がウッタラーの舞踊の師であり、師は弟子を子として扱えても妻としては扱えぬとしてこれを辞し、代わりに息子アビマニユとの縁組を勧める。こうして二人は結ばれ、パリークシットをもうけた。
クルクシェートラの戦い十三日目、ドローナはチャクラヴューハを敷いた。パーンダヴァ側でこれを破りうるのはアルジュナ、クリシュナ、プラデュムナ、そしてアビマニユの四人だけであり、その日アルジュナは別の戦場に誘い出されていた。破り方を知る唯一の者として、彼は陣へ踏み込む。続くはずの叔父たちは、シンドゥ王ジャヤドラタに入口を塞がれて後に続けなかった。
六重目まで突き破ったところで、ドローナ、クリパ、カルナ、アシュヴァッターマン、ブリハドバラ、クリタヴァルマン、ドゥフシャーサナの子——七人の大将が同時に襲いかかった。一人の武人に複数で当たることは戦の法(ダルマユッダ)に反する。武器を失い戦車を壊された彼は、車輪を引き抜いて振るったのちに討たれた。この日を境に、双方が守っていた戦の作法は崩れてゆく。
図像と象徴
図像に現れるのは、ほぼ例外なくチャクラヴューハでの最期の場面である。アクバルの命で編まれたジャイプル本『ラズムナーマ』(1574年頃)の一葉は、ムガルの画家ダスワントとタラの筆になり、渦を巻く陣のただなかで孤立する彼を描いている。象徴となるのは、武器を失った手に握られた戦車の車輪である。
系譜と関係
父はアルジュナ、母はスバドラーで、クリシュナとバララーマの甥にあたる。異母兄弟にイラーヴァット(母ウルーピー)、バブルヴァーハナ(母チトラーンガダー)、シュルタキールティ(母ドラウパディー)がいる。妻はヴィラータ王の娘ウッタラー、子はパリークシット。パーンダヴァの子らのなかで最も愛され、ドラウパディーは自らの子よりも彼を慈しんだと語られる。
文化的足跡
彼の死を知ったアルジュナは、翌日の日没までにジャヤドラタを討てなければ自ら火に入ると誓った。十四日目の戦いはこの誓いを軸に展開し、日没と見せかけたクリシュナの計略によってジャヤドラタは討たれる。父の誓いと子の死は、叙事詩の後半を動かす最大の推進力となった。
インドの伝統競技カバディが、一人の攻撃手と七人の守備側で行われるのは、七人に囲まれて倒れたこの場面に由来するとする説明が広く行われている。チャクラヴューハに踏み込む技術と、カバディやコーコーの動きとの関連を指摘する見方もある。「入り方は知っていても出方を知らない」という言い回しは、今日のインドで、引き返せない事態に踏み込むことの比喩として日常的に用いられている。