カルナ
ヴァイカルタナ · ラーデーヤ · スータプトラ
太陽神スーリヤとクンティーの子でありながら御者の家に育ち、カウラヴァ側に立って実の弟アルジュナと戦い続けた悲劇の英雄である。
解説
概要
カルナ(Karṇa / कर्ण)は『マハーバーラタ』の英雄で、カウラヴァ側の中心人物の一人である。クンティーが王妃となる以前に太陽神スーリヤとの間に産んだ子でありながら、川に流されて御者アディラタに拾われ、その養子として育った。弓の腕はアルジュナに比肩し、生涯の宿敵とした。名は「耳」または「耳飾りを付けた者」を意味する。出自を知らぬまま実の弟たちと戦い、知らされたのちもなお敵陣に留まった人物として、叙事詩のなかでも際立って複雑な位置を占める。
神話・物語
クンティーは少女の頃、聖仙ドゥルヴァーサスから任意の神を招いて子を得る真言を授かり、好奇心からスーリヤを呼び出してしまった。未婚での出産を恐れた彼女は生まれた子を箱に入れて川へ流す。カルナは黄金の鎧と耳輪を身に着けて生まれ、それが体の一部としてつながっている限り不死身であった。
武芸はドローナのもとで学んだが、最強の武器ブラフマーストラの伝授を身分を理由に断られる。そこでバラモンと偽ってパラシュラーマに弟子入りし、秘技を授かった。師の膝枕で虫に咬まれても痛みに耐えたことからクシャトリヤであることを見抜かれ、いざというときに用法を忘れるという呪いを受ける。この呪いが最期に効いてくる。
御前試合に飛び入りしてアルジュナと同じ技を披露したとき、決闘には身分の証が要るとクリパに指摘されて窮した。すかさずドゥルヨーダナが彼をアンガ王に即位させ、二人は生涯の友となる。カルナの忠誠はこの一事に発しており、以後どれほど非を悟っても陣営を変えなかった。
骰子賭博の場では、奴隷となったドラウパディーを新しい夫を選べばよいと罵り、衣を剥ぐよう命じた。叙事詩は彼を美化せず、この場面を最も醜い言動として記録している。
追放十三年目、アルジュナに勝利を与えようとしたインドラがバラモンに扮して黄金の鎧を乞うた。父スーリヤの忠告を受けながらも、施しを断らぬという自らの誓いを選び、彼は小刀で皮膚と一体の鎧を切り離し、血に染まりながら微笑んで差し出した。代償に得たのは、必ず的を射抜くが一度しか使えない槍である。開戦前にはクリシュナが、続いてクンティー自身が出自を明かし、パーンダヴァ側に移るよう説いた。彼は五兄弟のうちアルジュナ以外を殺さぬと約束したが、友を裏切ることは拒んだ。
図像と象徴
黄金の鎧と耳輪が最も基本的な標である。太陽への礼拝と、正午の沐浴のあとに乞われたものを何でも与える施しの習慣が、彼の人格を示す所作として繰り返し語られる。弓はヴィジャヤ、旗標には象の綱が掲げられた。日本では『Fate』シリーズをはじめとする創作を通じても知られるが、これらは近年の翻案である。
系譜と関係
生母はクンティー、父はスーリヤ。したがってユディシュティラ、ビーマ、アルジュナの同腹の兄にあたるが、その事実が明かされるのは彼の死後である。養父はアディラタ、養母はラーダー。ドゥルヨーダナとは君臣であり、それを超えた友であった。ヴリシャセーナら複数の子があり、いずれも戦で命を落とす。
文化的足跡
クルクシェートラの戦い十七日目、彼の戦車の車輪が地に沈み、押し上げようと降りたところをアルジュナが射た。武器を持たぬ者を討つのは法に反すると訴えた彼に、クリシュナはドラウパディーを辱めた日の法はどこにあったのかと問い返す。この場面は、法(ダルマ)が誰にとっての法かを突きつける箇所として、繰り返し論じられてきた。近現代のインドでは、出自によって機会を奪われた者としてカルナを読み直す試みが盛んで、ラーマダーリー・シン・ディンカルの叙事詩『ラシュミラティー』(1952年)はその代表である。