ウルーピー
ウルーチー · ウルーピカー · パンナガスター
『マハーバーラタ』に登場するナーガの姫。アルジュナの第二夫人でイラーヴァットの母にあたり、宝珠によって夫を蘇生させたと伝えられる。
解説
概要
ウルーピー(Ulūpī / उलूपी)は『マハーバーラタ』に登場するナーガの姫である。ナーガ王カウラヴィヤの娘で、アルジュナの第二夫人、イラーヴァットの母にあたる。『ヴィシュヌ・プラーナ』『バーガヴァタ・プラーナ』にも名が見える。上半身を人、下半身を蛇とするナーガカンニャー(ナーガの乙女)の姿で描かれるのが通例である。物語のなかで彼女が果たす役割は二つあり、イラーヴァットを産んだことと、呪いによって死んだアルジュナを蘇らせたことである。
神話・物語
父カウラヴィヤはガンガー河の水底に蛇たちの国を治めていた。ウルーピー自身も武芸に長けた者であったと語られる。物語の後段では、アルジュナと出会う前に夫があったこと、その夫がスパルナと戦って死に、彼女が子のないまま寡婦となっていたことが明かされる。
アルジュナはドラウパディーとの婚姻の条件を破った罰として12年の巡礼に出た。ガンガーで沐浴していたところをウルーピーが水中へ引き込み、父の宮へ連れ去る。求婚を受けたアルジュナは巡礼中の禁欲を理由に断ったが、その誓いはドラウパディーに関わるものにすぎないとウルーピーが説き、これに応じて二人は結ばれた。生まれた子がイラーヴァットである。彼女はアルジュナに、水陸いずれにも棲む生きものはすべて彼に討たれうるという恩寵を与えた。イラーヴァットはのちにクルクシェートラの戦いで父の側に立って戦死する。
もう一つの挿話は、蘇生をめぐるものである。クルクシェートラの戦いでアルジュナがビーシュマを策によって討ったため、ビーシュマの兄弟にあたるヴァス神群がアルジュナを呪った。これを知ったウルーピーは父に助けを求める。父が河の女神ガンガー——ビーシュマの母である——に問うと、アルジュナは自らの子バブルヴァーハナに討たれるが、ウルーピーがナーガマニと呼ばれる宝珠をその胸に置けば蘇るであろうと告げられた。
ウルーピーはこの助言に従い、マニプラの王バブルヴァーハナ——アルジュナとチトラーンガダーの子——を唆してアシュヴァメーダの馬とともに訪れた父に決闘を挑ませる。激闘の末、アルジュナは息子の矢に討たれた。駆けつけたチトラーンガダーはウルーピーを責め、バブルヴァーハナは自らの命を絶とうとするが、ウルーピーがこれを止め、国からナーガマニを持ち帰ってアルジュナの胸に置いた。こうして命が戻り、呪いは解かれたという。呪いを解くために夫をいったん死なせるという筋立ては、この人物の性格をよく示している。
図像と象徴
独立した礼拝像はほとんど伝わっていない。下半身を蛇とする姿は、南アジアの図像におけるナーガカンニャーの定型に従う。子イラーヴァットの像において、冠の上や背後から現れる蛇の鎌首が母の血統を示すとされ、彼女の存在は息子の図像を通じて間接的に表されているとみることもできる。
系譜と関係
父はナーガ王カウラヴィヤで、アイラーヴァタの系譜に連なるとされる。夫はアルジュナ、子はイラーヴァット。『マハーバーラタ』は彼女を、ブジャガートマジャー、パンナガスター、ウラガートマジャーなど、いずれも「蛇の娘」を意味する多くの呼称で呼んでいる。アルジュナの他の妃であるドラウパディー、チトラーンガダーとは、蘇生の挿話を通じて関わりをもつ。
文化的足跡
パーンダヴァたちがカリ・ユガの到来を前に王位をパリークシットへ譲り、ヒマーラヤへの最後の旅に出たとき、ウルーピーはガンガーの水底の国へ帰ったと語られる。叙事詩の登場人物としては脇役であるが、ナーガの血統を人間の英雄の系譜に接続する結節点であり、南インドのアラヴァン信仰が成立する前提を用意した人物でもある。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。