ウッタラー
マツヤの王女 · アビマニユ妃 · パリークシットの母
マツヤ王ヴィラータの娘でアビマニユの妃。胎内の子はアシュヴァッターマンの武器から救われ、のちにクル王統を継ぐこととなる。
解説
概要
ウッタラー(Uttarā / उत्तरा)は『マハーバーラタ』に登場する女性で、マツヤ王ヴィラータと妃スデーシュナーの娘である。アルジュナが舞踊の師ブリハンナラーとして潜伏していたあいだ、その弟子として音楽と舞踊を学んだ。のちにアルジュナの子アビマニユに嫁ぐ。若くして寡婦となり、胎内の子はアシュヴァッターマンの武器に晒されながらクリシュナによって救われた。その子パリークシットがクル王統を継いだため、彼女は断絶しかけた王家をつなぐ位置に立つ。
神話・物語
第四巻ヴィラータ・パルヴァに登場する。追放最後の一年を身分を隠して過ごしたパーンダヴァのうち、アルジュナは宦官ブリハンナラーの姿で王女づきの舞踊と音楽の師となった。彼女はその弟子である。
潜伏の期限が満了し、パーンダヴァが素性を明かすと、王はアルジュナに娘を嫁がせようとした。だがアルジュナは、舞踊の師である自分にとって弟子は娘も同然であり妻とはできぬとして辞退し、代わりに子アビマニユとの縁組を勧める。こうして二人は結ばれた。
クルクシェートラの戦い十三日目、夫アビマニユはチャクラヴューハに単身踏み込んで孤立し、七人の大将に囲まれて討たれる。彼女は身重のまま寡婦となった。
最終夜、父を欺きによって殺された恨みを抱くアシュヴァッターマンが、パーンダヴァの血統を断とうとして彼女の胎内の子にブラフマシラーストラを向けた。クリシュナがこれを防ぎ、子は無事に生まれる。パーンダヴァの家系が絶えようとしたときヴィシュヌが与えた子であるという含意から、その子はヴィシュヌラータとも呼ばれた。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、胎児が守られる場面である。象徴となるのは胎そのもので、戦の全体が終わったあとに残された唯一の未来として置かれている。
系譜と関係
父はヴィラータ、母はスデーシュナー。兄にウッタラとシャンカ、異母兄にシュヴェータ。夫はアビマニユ、子はパリークシット。舅はアルジュナであり、同時にかつての師でもあるという二重の関係にある。孫にあたるジャナメージャヤの蛇供祭の場で、『マハーバーラタ』は初めて語られた。
文化的足跡
名は「上の」「優れた」を意味し、方角としては北を指す。兄ウッタラの名の女性形である。
『バーガヴァタ・プラーナ』も彼女に触れ、胎児が守られる場面をクリシュナの神性を示す挿話として語る。戦後の彼女がどうなったかを原典は詳しく語らないが、子の即位を見届けたとされる。十八日の戦いで両陣営がほぼ全滅したのち、王統がただ一人の胎児に懸かるという構図は、叙事詩の結末を象徴するものとして繰り返し論じられてきた。