ドゥフシャーサナ
ドゥッシャーサナ · ドゥシャーサナ
カウラヴァ百王子の次男でドゥルヨーダナの弟。骰子賭博の場でドラウパディーを辱め、その報いとしてビーマに胸を裂かれた。
解説
概要
ドゥフシャーサナ(Duḥśāsana / दुःशासन)は『マハーバーラタ』の登場人物で、盲目王ドリタラーシュトラと妃ガーンダーリーの子であるカウラヴァ百王子の次男にあたる。ドゥッシャーサナとも表記される。名は「治めがたい者」を意味する。生涯にわたって兄ドゥルヨーダナを慕い、その策謀に深く関与した。骰子賭博の場でドラウパディーを辱めた実行者として、叙事詩のなかでも最も憎まれる人物の一人である。
神話・物語
彼の名を決定づけたのは、骰子賭博の場面である。ユディシュティラが詐術によって財産も王国も弟たちも、そして妻までも失ったとき、ドゥルヨーダナは彼にドラウパディーを連れてくるよう命じた。ヴィドゥラをはじめとする家臣たちの制止も聞かず、ドゥフシャーサナは月経のため部屋にこもっていた彼女の髪を掴み、力ずくで集会場へ引き立てた。
カウラヴァの一人ヴィカルナがこの暴挙を難じたが、カルナは怒ってこれを一喝し、すでに勝ち取られた者は奴隷も同然であるとして、衣を剥ぎ取るよう命じる。ドゥフシャーサナが手をかけると、引くたびに新しい衣が現れて剥ぎ取ることはできなかった——ただしこの奇跡の挿話は批判校訂版の本文には見えず、後代の付加とされる。この場を目にしたビーマは、ドゥフシャーサナの胸を裂いてその血を飲むと誓った。
クルクシェートラの戦いでは兄の陣にあって戦い続けたが、十六日目、矢の雨を浴びせてきた彼を認めたビーマは、あの日の屈辱を思い出して飛びかかる。四肢をへし折り、胸を引き裂き、傷口から滴る血を飲み干した。誓いはこうして果たされた。
図像と象徴
固有の像容は伝わっていない。図像に現れるのは、ドラウパディーの髪を掴む場面か、ビーマに胸を裂かれる場面のいずれかである。ラージャ・ラヴィ・ヴァルマの油彩をはじめ、近代インド絵画では前者が繰り返し描かれた。彼の存在は、他者を辱めるという一つの行為に還元されて記憶されている。
系譜と関係
父はドリタラーシュトラ、母はガーンダーリー。兄はドゥルヨーダナ、ほかに九十八人の弟と妹ドゥフシャラーがいる。母方の伯父はシャクニ。ドゥルヨーダナ、シャクニ、カルナとともに一団をなし、パーンダヴァに対する策謀のほとんどに名を連ねる。
文化的足跡
血を飲むという結末は、叙事詩のなかでも際立って凄惨な場面として知られる。南インドのドラウパディー信仰では、この場面を再現するテールクートゥ(街頭劇)が祭の山場に置かれ、演者が赤い液を口にする所作を伴うこともある。誓いの成就を身体で確かめるという性格の演出であり、クシャトリヤの誓いが宗教儀礼へ転じた例といえる。