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火神

火を神格とし、あるいは火を扱う技術を司る神々のファセット。火は自然現象であると同時に、人間だけが管理する技術でもある。この二面性が、火の神を燃える力そのものと、鍛冶・かまど・祭壇の火とに分ける。

LECTIO — 解説

ヴェーダのアグニは祭壇で焚かれる火そのものであり、供物を神々へ運ぶ使者である。『リグ・ヴェーダ』の第一句がアグニへの呼びかけで始まることが、この神の位置を示している。ギリシアのヘーパイストスは火を鍛冶に使う職人神で、跛行し、笑われ、しかし神々の武具を作る。同じギリシアで、かまどの火はヘスティアーという別の女神が受け持つ。ローマではウェスタの神殿の火を絶やさぬことが国家の存続と結びついた。日本のカグツチは生まれながらに母イザナミを焼き殺し、父に斬られる——ここで火は災厄として現れる。アステカのウエウエテオトルは「老いた神」と呼ばれ、火は最も古い神格とされた。同じアステカでこの火を若く強壮な支配者の姿に描いたのがシウテクトリであり、五十二年ごとに全土の火を消して新たな火を熾す祭がこの神に捧げられた。中国の祝融はやや趣が異なり、五行の配当によって火・南・夏をひとまとめに担う。物語より先に格子上の位置が決まる神である。北欧では、火が神の側に立たない。ロギは野火そのものだがヨトゥンであり、トールの一行を早食いで負かす役で現れる。世界を焼くスルトも巨人である。この体系において火は、人が管理するものではなく、外から来て終わらせるものとして語られる。

図像は、炎そのもの、鎚と金床、かまど、そして老人の姿である。技術神としての火の神は道具を持ち、災厄としての火の神は定まった姿を持たないことが多い。

火の起源を「盗み」として語る型は世界に広く分布する。ギリシアのプロメーテウス、北米先住民のコヨーテやワタリガラス、ポリネシアのマウイ。ただしこの分布の広さは、伝播や共通の起源を意味しない。火の管理こそが人間の条件であるという事実が、似た形の話を独立に生んだと考えるほうがよい。

なおこのファセットには、火そのものである神、火を扱う神、火をもたらした者の三種が同居している。プロメーテウスは火の神ではなく、火の運び手である。同じ棚に並んでいることを、同じ機能だと読まないでほしい。

この役割の神格

22柱を収載(知名度順)
PLATE プロメーテウス ギリシア神話 プロメーテウス Προμηθεύς — 火神 PLATE ヘスティアー ギリシア神話 ヘスティアー Ἑστία — 火神 PLATE ヘーパイストス ギリシア神話 ヘーパイストス Ἥφαιστος — 火神 PLATE アグニ ヒンドゥー神話 アグニ अग्नि — 火神 PLATE ウゥルカーヌス ローマ神話 ウゥルカーヌス Vulcānus — 火神 PLATE ウェスタ ローマ神話 ウェスタ Vesta — 火神 PLATE スルト CREATURE 北欧神話 スルト Surtr — 火神 PLATE スヴァローグ スラヴ神話 スヴァローグ Swaróg — 火神 PLATE ショロトル アステカ神話 ショロトル Xolotl — 雷神 PLATE ペレ ポリネシア神話 ペレ Pele — 火神 PLATE 不動明王 仏教の尊格 不動明王 不動明王 — 知恵の神 PLATE 祝融 中国神話・道教 祝融 祝融 — 火神 PLATE ミシュコアトル アステカ神話 ミシュコアトル Mixcōātl — 天空神 PLATE シウテクトリ アステカ神話 シウテクトリ Xiuhtēuctli — 火神 PLATE シャンゴ アフリカ神話 シャンゴ Ṣàngó — 雷神 PLATE カグツチ 日本神話 カグツチ 火之迦具土神 — 火神 PLATE スヴァロジチ スラヴ神話 スヴァロジチ Сварожичь — 火神 PLATE ドラウパディー ヒンドゥー神話 ドラウパディー द्रौपदी — 火神 PLATE ドリシュタデュムナ ヒンドゥー神話 ドリシュタデュムナ धृष्टद्युम्न — 軍神 PLATE ペルシア神話 アシャ・ワヒシュタ 𐬀𐬴𐬀 𐬬𐬀𐬵𐬌𐬱𐬙𐬀 — 火神 PLATE アータル ペルシア神話 アータル 𐬁𐬙𐬀𐬭 — 火神 PLATE CREATURE 北欧神話 ロギ Logi — 火神