ペレ
ペレホヌアメア · Pele-honua-mea · マダム・ペレ
ハワイ神話の火と火山の女神。ハワイ諸島を生んだ造り手とされ、キラウエア火山の火口ハレマウマウに住むと伝えられる。海の女神ナーマカに追われ島伝いに南下した移住神話で知られる。
解説
概要
ペレ(Pele)は、ハワイの神話における火と火山の女神である。ハワイ諸島そのものを生み出した造り手とされ、島で今も活動を続けるキラウエア火山の火口ハレマウマウに住むと伝えられる。「聖なる大地のペレ(ペレホヌアメア)」「大地を食らう女(カ・ワヒネ・アイ・ホヌア)」などの称え名をもち、敬意をこめてマダム・ペレ、トゥートゥー(祖母)・ペレとも呼ばれる。噴火は今日もこの女神の力の現れとして語られ、ハワイでは生きた信仰の対象であり続けている。
神話・物語
ペレの物語の中心は、故郷からハワイへ渡る移住神話である。母は豊穣の女神ハウメアで、父については伝承が割れ、モエモエとする説、カネ・ミロハイとする説などがある。きょうだいの数も一定せず、19世紀のエリスやベックウィットが伝える系譜では、複数の兄弟姉妹が火山や雷雨、雲を司るとされる。ペレは故郷カヒキ(タヒチ方面)を離れる——気性ゆえに父に追放されたとも、姉である海の女神ナーマカ(ナーマカオカハイ)の夫を奪って逃れたとも語られる。兄の助けを得て舟で旅立ち、ニイハウ、カウアイ、オアフ、マウイと島伝いに火の穴を掘るが、追いすがるナーマカの水がそのたびに火を消してゆく。最後にハワイ島へ至り、海の届かぬキラウエアの火口に安住したという。マウイ島ハナ近くでの姉妹の死闘でペレの体は裂かれ、以後は霊としてハレマウマウに住むとする異伝もある。妹で末子のヒイアカ(フラの女神)を主役に、恋人ロヒアウをめぐる長大な物語群も伝わり、雪の女神ポリアフや豚の半神カマプアアとの争いも語られる。
図像と象徴
ペレは、若く美しい女性としても、道行く人を試す白髪の老婆としても、また白い犬としても現れると伝えられる。標識となるのは火そのものであり、溶岩、噴煙、稲妻がその姿と力を表す。火山ガラスが糸状に伸びたものは「ペレの髪」、涙のしずくの形に固まったものは「ペレの涙」と呼ばれる。オヒア・レフアの赤い花は女神に捧げられ、これを摘むと雨が降るともいう。近代の絵画では、炎を背にした気高い女性像として描かれ、火山国立公園に長く飾られたD・ハワード・ヒッチコックの油彩がよく知られている。
系譜と関係
ペレは、母ハウメアを介して大地の母パパと天空の父ワーケアに連なる古い家系に位置づけられる。海の女神ナーマカは対立する姉、フラの女神ヒイアカは愛する妹であり、火と水、火と踊りという対の関係が物語を動かす。マウナ・ケアの雪の女神ポリアフとは、火と雪の対照をなす好敵手である。汎ポリネシアの主要神とは異なり、ペレはハワイの地で育った土地固有の神格であり、その物語は諸島の火山活動と分かちがたく結びついている。
文化的足跡
興味深いことに、ペレが島伝いに南下したという移住神話の順序は、北西の古い島から南東のハワイ島へと若くなる火山の実際の年代と符合する。伝統的な知が地質の事実をなぞっているとして、しばしば注目されてきた。今日でもキラウエアには供物が供えられ、溶岩の石を持ち帰ると災いを招くという言い伝えが観光客のあいだにも広く知られている。ペレはハワイの自然と誇りの象徴として、現代の芸術や創作にもくり返し登場する。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。