アータル
アードゥル · アーダル · アータシュ
ゾロアスター教の火の神。アフラ・マズダーの子とされ、真理の可視の現れとみなされる。古い層では熱による裁きの媒体であり、後代には火そのものと重なった。
解説
概要
アータル(アヴェスター語 ātar)は、ゾロアスター教における聖なる火であり、それを司るヤザタである。アフラ・マズダーの子とされ、その真理アシャが目に見える形をとったものとみなされた。中期ペルシア語ではアードゥル、アーダル。火そのものを指す語アータシュ(現代ペルシア語アーテシュ)は、これと同根である。語源は印欧祖語の *h₂eh₂tr-「火」に遡るとみられ、ラテン語 ater(黒い)やアルバニア語 vatër(炉)と同源に数えられる。
神話・物語
『ガーサー』の段階で、アータルはまだ神格ではない。そこでは裁きが下される媒体であり、道具である。熱による神明裁判——アヴェスター語でガルモー・ワラフ——の制度が背後にあり、燃えるアータルによって、熔けた金属によって、義が明かされると繰りかえし歌われる(『ヤスナ』30.7、32.7、51.9ほか)。火の試練は三十種にのぼったと伝えられる。
同時にアータルは啓示の光でもある。ザラスシュトラがアフラ・マズダーに選ばれたのはこの光を通してであり、火の前で祈るべしという教えも、ここから説き起こされる。太陽に向かうか、自らの炉に向かうか——いずれにせよ火を前にして祈るのは、アシャに心を集めるためだとされた。
『ザミヤード・ヤシュト』は、この神格と邪竜アジ・ダハーカ——のちのザッハーク——の争いを伝える。竜が神授の光輝フワルナフを奪おうと迫ったとき、アータルは、もし奪えば自分がその体に入り口のなかで燃え上がると告げた。竜は退いたという。ミスラと行動をともにし、二柱でこの竜に当たる場面もある。
図像と象徴
人の姿をとったこの神格の像はほとんど残らない。後代になると、アータルは火そのものと図像的に重なっていく。本サイトが主画像に掲げるのはアルダシール1世の金貨(ダブル・ディナール、223/4–240年頃)で、その裏面には二人の従者を左右に配した火壇が打たれている。サーサーン朝の貨幣はこの意匠を三世紀以上にわたって反復し、王権と火の結びつきを繰りかえし示した。
火壇は拝火神殿の中心にあり、最上位の火は「勝利の火」アータシュ・バフラームと呼ばれる(ウルスラグナの項を参照)。火を清める儀礼は年に千百二十八回行われるとされ、燃やされる薪の種類から灰の扱いに至るまでが規定されている。像をもたないこの神格は、規定の総体として現れる。
系譜と関係
アフラ・マズダーの子とされる。被造物のうち火を守るのはアシャ・ワヒシュタでもあり、両者の領分は後代に重なった。暦では各月の第9日を司る。ヴェーダのアグニとは、祭火を神とする点で機能がよく重なるが、名は別の語根に発しており同源ではない。
文化的足跡
拝火神殿の火は、イランとインドのゾロアスター教徒の共同体によって今日も守られている。イランのヤズドやインドのウドヴァーダーには、数世紀にわたって絶やされずに燃え続けているとされる火がある。